「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

贈与された資金で住宅ローンを返済するのはダメ

住宅取得資金贈与の特例には、「資金をもらった人(受贈者)」「住宅用家屋」のそれぞれに細かい条件が設けられています。そのうち代表的な条件を紹介しましょう。

 

まず、受贈者は「贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること」「贈与を受けた年分の所得税に係る合計所得金額が2000万円以下であること」といった条件が設けられています。

 

つぎに、住宅用家屋の条件で気をつけたいのは、登記上の床面積が50平米以上必要という点です。ただし広すぎても問題があり、240平米以下である必要があります。家屋の床面積の2分の1以上が居住用という条件にも注意しましょう。

 

住宅取得資金贈与の特例について、とくに勘違いしやすい条件がふたつあります。これは私が税務職員として確定申告の相談対応をしていたときによく目にしたケースです。

 

まずひとつは「贈与された金額の全額を住宅取得資金にあてる」という条件について。「全額」というところがポイントです。もらった資金の一部でも、他のことに使ってしまうとアウトです。

 

つぎに、「贈与を受けてから、住宅取得まで時間がかかる」というケースにも注意しましょう。特例のルールでは、贈与を受けた年の翌年までに建物を建てなくてはならないので、間に合わなければ問題になってしまいます。もし、工事が遅れるなどした場合であっても、最低限、屋根の骨組みがあり、土地に定着した状態になっている必要があります。

 

もうひとつ、勘違いしやすい重要なポイントは、「贈与された資金を住宅ローンの返済金にあてるのはNG」ということです。たとえば、親からもらった資金で住宅ローンを返した場合、これは住宅取得資金贈与の特例の対象にはなりません。

 

住宅取得資金贈与の特例は、あくまでも家屋の新築や取得、増改築、その敷地の取得にあてるために資金を使った場合に使える制度です。つまり、頭金や住宅取得のタイミングでかかる諸費用にしか使うことができません。

 

この点を間違えると特例を使えなくなり、大変なことになってしまいます。

 

特例を使うつもりでいたということは、贈与税の納税資金も準備できていないでしょうから、納税の期限に遅れてしまう可能性が高くなります。そうすると追徴税が課せられるだけでなく、住宅ローンどころではない利率で、負担が増えてしまいます。

 

これは住宅取得資金贈与の特例に限った話ではありませんが、特例をあてにして大きな売買をするときには、かならず細かな条件を1つひとつ確認するようにしてください。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年4月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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