「そんなの当たり前だ」と思われるかもしれませんが、だとすればどれだけ仕事をしても(しなくても)一定の収入が保証された正社員は、その当たり前が適用されない不自然な雇用と言えるのではないでしょうか。
個人事業主であればタニタ以外の企業からも仕事を受けることができます。ある記事によると最初にこの制度を利用したメンバー8人のうち全員が、初年度は平均3割の手取り収入増の成果を得たそうです。
2020年月には広告代理店最大手の「電通」も、翌年1月から正社員全体の3%に当たる230人を業務委託契約に切り替え、個人事業主として働いてもらう制度を始めると発表しました。
契約期間は年間で電通時代の給与を基にした固定報酬に加えて、実際の業務で発生したインセンティブも支払われるということです。制度利用者にかなり配慮の行き届いたシステムになっていますが、ファーストペンギン(最初に海に飛び込む勇気ある者)に有利な条件が提示されるのは当然のことです。
ここで注目すべきは、これは現在の正社員を個人事業主に転換する過渡期の制度であるということです。今後、仕事のできるフリーランスが世の中に増えてくれば、雇用上制約の多い正社員を抱えるよりは、実績があって成果に応じてコストを支払えばいい彼らを活用しようという企業が増えてくるのは必然といえます。
家賃の高い都会のど真ん中に立派なオフィスを構え、社会保険など多大な経費を負担して正社員を雇用するのは合理的ではありません。正社員雇用は大幅に減るか、維持されても至れり尽くせりの安定した身分ではなくなるはずです。
新型コロナが終息しても、動き出したこの流れはもう止めることはできません。10年後、サラリーマンが当たり前に毎月定額の収入を得られるのは完全に昔話になっていることでしょう。
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