初めて100兆円を超えたとされている「タンス預金」。「自宅に現金を置いておけば、相続税対策になるのでは」と、こっそりとタンス預金を試みる人が後を絶ちません。しかし税理士法人チェスター「タンス預金は税務署にバレる」と警報を鳴らします。その理由について見ていきましょう。

税務署が「タンス預金」を見つけるまで

「いやいや、タンス預金のメリットは、税務署にバレないことでしょう」という声もあるでしょう。しかし冒頭の通り、「タンス預金」は高い確率で税務署は分かってしまうものなのです。

 

なぜか……

 

その理由は非常にシンプルで、税務署は執拗なまでに調べるから、ということにあります。「タンス預金」が税務署に暴かれるまでを順を追って見ていきます。

 

まず相続が発生すると、なぜ、税務署は人が亡くなったことが分かるのでしょうか。人が亡くなり役所に死亡届を提出すると、その情報はある程度タイムリーに税務署に通知されます。

 

「個人情報の観点から、そんなことして大丈夫なのか」と考える人もいるでしょうが、相続税法第58条で、死亡届が出されたら情報を共有するということが明文化されています。だから税務署は人が亡くなったことをタイムリーに把握することができるのです。

 

次に税務署は過去の所得をもとに、相続税の対象になるかどうかを調査します。税務署は過去の確定申告書のデータや、給与所得であれば毎年いくら給料をもらっていたのかが源泉徴収から分かります。亡くなった方の所得状況を税務署は把握しているわけです。そこから相続税がかかりそうかどうか、という視点で見ることができます。

 

特に医者など給与所得の高い方に相続が発生した場合、相続税申告書に金融資産数百万円と記載されていたとすると、過去の所得データから給与所得が毎年何千万円とあったのに、金融資産が数百万円しかないとなると、家に現金を隠しているのではないか、と疑惑を持たれるわけです。

 

そして、相続税がかかりそうな人に対しては、事前に「相続税のお尋ね」を送ります。その封筒が届いた時点で、税務署はこの人は相続税がかかりそうと認識している、と言えます。

 

このお尋ねに対し、反応がなければ調査開始、となります。所得状況や職業から、相続税の申告がなかったり、申告額が少なかったりすると、調査の対象になりやすいと考えていいでしょう。

 

税務署は職権で去10年分の預金口座の記録を調べられます。残高状況だけでなく、移動状況なども調べて、「タンス預金」を隠している可能性あるかないかを見極めます。10年分もさかのぼることができますので、ある程度のことは分かってしまうわけです。

 

そして最後に、用途不明の多額の出金があれば、これは怪しいと自宅を調べられるわけです。自宅を調べられると、本棚に隠していても、庭に埋めてあっても、執拗に調べられるので、「タンス預金」は見つかる可能性は高まります。

 

調査で「タンス預金」が見つかると、納税者は不利益を被ります。まず本来払うべき相続税に加えて、40%の重加算税と延滞税をペナルティとして払わなければならないので、当初と比べて、かなり多額の税金となります。さらに金額が大きく悪質であれば、刑事罰を受けることもあります。

 

このようなことを考えると、「タンス預金」の金額に関わらず、相続発生から10ヵ月以内にきちんと申告することが、納税者にとってプラスになると言えます。

 

このように、「タンス預金」は相続税対策になりません。追徴課税を負うなど、無用のリスクを被ることになります。相続税を節税したいのであれば、税制上の特例を適用するなど、正しい方法で行うことが重要です。

 

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    本記事は、税理士法人チェスターによるYouTubeチャンネル「税理士法人チェスター【公式】」内の動画を書き起こし・再編集したものです。

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