高齢の親が資産状況を教えてくれず、万一のときが不安で仕方ない…。そのような悩みを持つ子世代は少なくありません。相続対策は、被相続人にその意思があってこそ万全の効果を得られるもので、いくら子どもが対処しようとしても限界があるのです。かたくなな親を前に、一体どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

高齢の父を施設に入れたいが、資産状況が不明

今回の相談者は50代で自営業を営む松本さんです。会社員の夫と大学生の娘2人の4人家族ですが、下の子どもが中学生になってからは、結婚前にデザイン事務所で磨いだ腕を生かし、グラフィックデザインの仕事に復帰しています。高齢となった父親の財産の件で筆者の事務所を訪れました。

 

 

松本さんの母親は6年前に亡くなっており、それ以降、もともと気難しかった父親は、さらに疑心暗鬼な性格になってきたといいます。年を取って体が弱ってきたこともあり、自営業で多忙な松本さんと、同じく既婚で子育てをしながら会社勤めをしている妹さんでは、そばで面倒を見ることができないことから、施設への入所を検討してはどうかと父親に持ち掛けたそうですが、ひとりで大丈夫だといい張り、まったく話を聞いてくれないそうです。

 

施設への入所を拒絶するのは、金銭的な不安があるからではと思い、資産状況の話を聞こうとしても、怒るばかりで話が進みません。

 

「父はずっとサラリーマンで、私も妹も不自由な思いこそしませんでしたが、贅沢をさせてもらったことはありません。両親とも倹約家ですが、父は凝り性なところがあるので、もしかしたら、貯金がないのかもしれない…と不安に思う部分もありまして」

 

父親は頑固で内向的な性格で、松本さんも妹さんも、幼いころから距離を感じていたといいます。父親自身も、娘に頼ったり相談したりするようなタイプではなく、すべてを自分で切り回してきました。体が元気な間は問題なかったのですが、次第に足腰が弱ってきており、松本さんは、このままひとりで生活させるのは不安だと頭を抱えていました。

 

しかし、筆者のところに相談に来てから1ヵ月後、心配していた事態が起こってしまいました。松本さんの父親は、夜中にお手洗いに行こうとした際に廊下で転倒し、骨折してしまったのです。そのため、ひとり暮らしは継続できなくなり、松本さんと妹が交代で入院先の病院に行き、サポートしています。

 

今後に不安を感じている松本さん姉妹は、父親のいない実家に戻り、父親の財産に関する書類などを探してみることにしました。

 

「入院時、父親から指示された引き出しを見ると、200万円ぐらいの残高がある通帳とキャッシュカードがありました。年金の入金がある口座で、普段の生活費として使っているようです。あとで妹と自宅を調べたら、父の自室のタンスの奥から、いくつか書類や通帳が出てきました。定期預金がだいたい3000万円ぐらい、あとは有価証券が2000万円ぐらいです。自宅はもちろん父親名義です。父親は大手企業に勤めていましたが、次男坊で、祖父母からの遺産はそこまで多くなかったと思いますので、おそらく、これが全財産だろうと考えています」

「通帳を探し出したのを知ったら、逆上するかも…」

さらに松本さんが父親の自宅不動産を調べたところ、評価額は約1500万円でした。そのため、預金や有価証券などを合わせると6500万円以上にのぼります。このままでは相続税の基礎控除を2300万円も超えてしまい、230万円ほどの相続税がかかりそうです。

 

筆者は、約5000万円の金融資産を活用し、生命保険への加入、不動産の購入、孫への贈与などで相続対策を行うようアドバイスしました。しかし松本さんの表情は曇ったままです。

 

「父がいない間に家探しのようなまねをしたことを知ったら、激怒するに違いありません。父親はとても頑固な人ですし、私たちに節税対策を任せてくれるとはとても…。きっと、自分の財産は死ぬまで渡さないというのではないかと」

 

松本さんの父親の性格上、財産のすべてをオープンにしたり、娘である松本さんたちに相続対策を託してもらえるとは思えないというのです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営80代するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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