高齢の親が資産状況を教えてくれず、万一のときが不安で仕方ない…。そのような悩みを持つ子世代は少なくありません。相続対策は、被相続人にその意思があってこそ万全の効果を得られるもので、いくら子どもが対処しようとしても限界があるのです。かたくなな親を前に、一体どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

「相続対策は親のためでもある」と、理解を促して

そこで筆者は、これを機に松本さんに父親を説得してみてはどうかとアドバイスしました。老後のサポートのためにも、いまから生前対策を行うことで相続税も節税でき、父親の将来の財産も管理しやすくなるという旨を伝えるよう、松本さんにお話ししました。

 

 

「たしかに、父の老後のサポートをするためということで話を切り出せば、受け止め方も違うかもしれませんね。現状のままでは数百万円単位の相続税がかかってくるかもしれないと伝えれば、父の考えも変わるかも…」

 

松本さんはそういってうなずきました。

 

その後、松本さんは妹さんと一緒に父親の病院を訪れ、穏やかに話を切り出したそうです。父親の通帳などを勝手に見たことを詫びつつ、このままだと数百万円単位で相続税が発生してしまうこと、いまからなら対策の手段があることなどを話したところ、これまでのように怒りを爆発させることなく、黙って話を聞いてくれたそうです。

 

「父も体が弱ったことを実感しているようで、態度が柔らかくなってきました。私たちのことも、少しは頼りにしてくれているようです。父にはこれからもずっと不安なく生活してほしいし、これまで父が頑張って築いてきた資産も守りたいのだと率直に話すと、気持ちをわかってくれたように思います」

 

具体的な行動はまだこれからですが、幸い、松本さんの父親は足腰以外はしっかりしています。松本さんは、父親と腹を割って話し合いながら、家族みんなで納得のいく対策を立てていきたいと語ってくれました。

 

相続税の生前対策には、本人の意思確認が不可欠です。財産をなかなか明らかにしたがらない親には、本人の意思や気持ちを聞くことで安心してもらい、親を中心に老後のサポートをする気持ちを伝えるようにしましょう。相続対策はなにも子どものためだけではなく、親自身のためでもあるのです。

 

相続税がかかる場合は、具体的な額を伝えることで親に危機感を持たせることも有効な手段です。親への配慮を伝えることで、親子の距離を縮め信頼関係を再構築してもらうことで、道が開けます。

 

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営80代するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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