高齢化の進展する日本では、一戸建てからマンションや有料老人ホームへの住み替えを検討する高齢者が増えています。不動産の売却・現金化を狙うも、譲渡所得には高額な課税がなされるため注意が必要です。※本記事は、メガバンク出身の金融・ファイナンスの専門家、藤波大三郎氏の著書、『たのしく学べるファイナンシャルプランニング[改訂版]』(創成社)より抜粋・再編集したものです。

不動産を有効活用した「等価交換方式」で相続も円満に

不動産の有効活用では等価交換方式が有名です。土地所有者とデベロッパー(不動産開発業者)が土地と建設資金を出し合い、でき上がった建物の所有権と土地の所有権をその土地と建設費の割合に応じて交換するという手法です。この方式では土地所有者は事業資金を調達する必要がありません。また、この建物と土地の交換はいわゆる立体買換えの特例を用いて、譲渡益を繰り延べることができます。事業資金は不要であり、借入金がないので安定した手法といえます。

 

この方式は地権者の相続対策としても活用されます。相続財産が住居や駐車場、アパートなどの場合、相続人の誰がどの資産をどのように相続するかを決めることは難しいことです。現金を作るために土地の一角を売却すると残った土地の形が悪くなり、資産価値が下がってしまうことがあり。そこで、等価交換により区分所有建物にすることで資産の分割がしやすくなり、また、一部の住戸を換金することもでき、相続が円滑になります。

 

その他の方式では空室リスクを回避できる事業受託方式がありますが、資金リスクを負い、土地所有者が資金調達をしなくてはなりません。事業としては賃料保証がつくと安定しているといえます。

 

信託銀行に土地を信託して運用実績に応じた配当を得る土地信託方式、定期借地権方式があります。定期借地権方式は、リスクは少ないのですが、収入、すなわち地代収入も少ないという点があります。土地信託方式は、信託配当は実績によるので、事業リスクは最終的には土地所有者が負います。

 

なお、借入金により所有する土地にアパートを建設して相続対策とするという考え方には注意すべき点があります。それは借入金を相続した場合、その分割や、あとに述べる遺言や遺産分割協議書によるのではなく、法定相続分によって金融機関から請求を受けるからです。これを回避するには、資力のある相続人が全債務を借り換えて単独の債務者となることが必要となります。

不動産投資の「利回り、採算」を判断するには?

不動産投資の利回りでは、NOI(ネット・オペレーティング・インカム)利回りが重要で、年間収入から諸経費を差し引いた純収入を自己資本と借入金の合計額で割るものです。

 

DCF法による採算検討も大切です。これには、NPV法(ネット・プレゼント・バリュー法、正味現在価値法)と、IRR法(インターナル・レート・オブ・リターン法、内部収益率法)があります。NPV法は、将来の収益を現在価値に割り戻し、その額と投資額を比較するものです。IRR法とは、投資額と同じになる割引率を求め、それを内部収益率と呼び、それが期待収益率以上であれば投資価値があると考えるもので、単年度利回りでは考慮されない貨幣の時間価値を取り入れた指標です。

 

また、DSCR(デット・サービス・カバレッジ・レシオ)は、借入金償還余裕率のことで、「各期の純収入÷借入金元利返済額」によって求められます。当然、1以上が必要ですが、実務上、1.5程度が必要といわれており、これによって、銀行からの借入限度額を考えることになります。

 

 

藤波 大三郎
中央大学商学部 兼任講師

 

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