「接し方がわからない」「予想外の反応に戸惑う」大人の発達障害に悩むのは本人だけではありません。本連載では、長年、医療福祉相談員として働いてきた野坂きみ子氏が語る、ともに向き合い、仕事をしていくうえで必要なことを紹介します。

何をもって軽度・重度というのか…概念や名称の混乱

日本でも1970年代以降でしょうか、学校に上がったのだけどどうもうまくいかない、いまの言葉でいうと適応できない子どもたちが出てきます。

 

うまく話せない、友達が作れない、じっと教室に座っていられない、忘れ物が多い、約束を守れない、ひとつのことに異様にこだわる、できる科目とできない科目の差が激しい、などなど。学校生活あるいは家庭でもそうであったかもしれませんが、生活に支障が出てきます。

 

それらの状態が発達障害の状態に似ていることに気づいていきます。しかし知的にはそれほど障害がない、知能検査をすると高く出る子もいます。これらの子どもたちをどのように考えたらよいのか、このあたりから概念と名称の混乱が出てきます。

 

「情緒障害」、「微細脳障害」、「軽度発達障害」、「高機能発達障害」、障害されているのは情緒だけなのか、脳の微細な障害なのか、何をもって軽度、重度というのか、高機能群があれば低機能群があるのか、知能指数だけの問題なのか。

 

それは日本だけのことではなく、これまで自閉症児に見られていたような自閉的な特徴が、知的障害が顕著ではない、あるいは知的に高機能な子どもたちにも見出されるようになりました。このような状態をどう理解したらよいのか試行錯誤が続きます。

「大人の発達障害」が増加…背景にあるものは

このようにうまく生活できなかった子どもたちも、大きくなって大人になります。しかし子どもの時に不都合を感じていた子どもたちや親は、医療機関や相談機関につながる機会もあったでしょう。そして自分にはこういう特徴、障害があるのだなと理解に至ることも多かったかもしれません。

 

しかし子どもの時は特に問題がなく、学校生活も特に支障なく過ごし、むしろ成績はよかったかもしれない子どもたちが、就職してのちうまく仕事ができない、職場の集団にいられない、そのような状態が見うけられるようになります。「空気が読めない」など対人関係の違和感が表現され、アスペルガー症候群という言葉も浸透する中で、2000年以降、多く聞かれるようになります。

 

そして「大人の発達障害」と言われるようになりました。成人になってから、発見されるのです。いまでは成人になってから発症したのではないと理解されていますし、「大人の発達障害」は「大人になってからわかった」というのが定説です。

 

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野坂 きみ子

1958年、札幌生まれ。
大学卒業後、精神科病院、リハビリ病院、総合病院、一般病院と30年余り病院の医療福祉相談員として働く。その後3年間、ハローワークで障害者就労支援の仕事をする。現在メンタルクリニック勤務。精神保健福祉士。北海道大学大学院社会システム科学博士後期課程中退。

 

 

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    本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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