多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「発展途上国の貧困」が密接につながっていることはあまり知られていません。そこで、池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)より、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと貧困について解説します。

若者の15%以上が発育不良の現実

グアテマラのサン・セバスティアン農園では、自分の農園の労働者に限らず、先住民族のすべての労働者の子どもたちのために農園内に小学校を開設していますが、お昼休みには栄養豊かな給食も提供しており、昼食の時間は子どもたちにとって至福の時間になっています。どの子も笑顔で行儀よく並んで給食を受け取り、楽しそうに頬張ります。コーヒー農園が主体となるこの取り組みにより、子どもたちの栄養不足は大幅に改善されました。

 

なお、サン・セバスティアン農園に隣接する同じ一族が経営するサン・ミゲル農園にはクリニックも併設され、農園労働者とその家族及び地域住民たちの健康管理にも大きく貢献しています。

 

サン・セバスティアン農園にある学校の給食に並ぶ子どもたち
サン・セバスティアン農園にある学校の給食に並ぶ子どもたち

 

・コーヒー生産とサハラ以南のアフリカにおける飢餓

 

世界で飢餓がいまだ深刻な問題となっている地域はアフリカのサハラ以南です。コーヒー発祥の地として、コーヒーが国の主要輸出品目のトップを占めるエチオピアは干ばつの影響を受けやすく、慢性的な食料不足が発生しています。

 

有数のコーヒー生産地域、ジンマにおける調査も、コーヒー生産農家の66%以上に食料が不足していることが報告されています。同調査では生産農家の若者の15%以上に栄養不足による発育不良が認められ、そのうち3.5%はかなり重症なものでした。

 

世帯収入の低い生産農家で育った若者の発育不良は、実に世帯収入が多い家庭の6倍にものぼっています。さらに、子どもの数が1人が増えるごとに、発育不良の割合が20%も増加する傾向も報告されました。食料が慢性的に不足気味である中、家族が増えると元々少ない食料をさらに分け与えなければならないことが原因であるのは明らかでしょう。

 

しかし、その一方で、この調査が行われた地域の発育不良の人々の割合は、エチオピアのその他の地域(26.5〜28.5%)や、他のサハラ以南の国々で行われた調査による結果より低いということも指摘されています(ケニア15.6%、タンザニア21%、ナイジェリア24.2%)。この事実はコーヒー生産に携わり生計を立てることが、飢餓を救う手段の一つとなる可能性を示しているとも言えます。

 

コーヒー生産に携わる低所得層の家庭がより収入を増やせるような技術支援を行い、食料を得られる支援と組み合わせていけば、飢餓の問題解決への有効な手がかりとなるかもしれません。

 

 

池本 幸生
東京大学東洋文化研究所教授

 

José.川島 良彰
株式会社ミカフェート 代表取締役社長

 

山下 加夏
ミカフェート・サステイナブル・マネージメント・アドバイザー

 

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