ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

どの施設が親に合っているのかを検討する

現時点で介護が必要でない自立の人にお薦めの施設

 

●有料老人ホーム

 

有料老人ホームは、自立の人から重度の方々まで幅広く、終身住むことができる施設です。介護付き、サービス付きと明記できるのは、特定施設の指定を受けているところのみで、人員面や設備運営に基準があります。基本的に費用が高めですが、食事や浴室、居室に各施設の特色があり比較的手厚い介護が受けられます。

 

入居時費用が必ず必要なところと、月額で上乗せして支払えるところなど様々です。入居時費用は先の見通しが難しいので、私は月額利用料が多少高くなっても入居金のないところがよいでしょう。それでも月額が平均30万以上は確実にかかるので、ある程度余裕のある家庭向きではあります。

 

最近は独身寮などを買い取って有料施設にしているところも多いため、エレベーターにストレッチャーが入らなかったりするところもあるので注意しましょう。見学のときにチェックしたい項目のひとつです。有料老人ホームは特別養護老人ホームなどの他の形態に比べて、施設によって費用がピンきりとなります。特に住宅型有料老人ホームほどその差が大きいので、1か所だけでなく複数の施設の条件を比較し決めるようにしてください。

 

●ケアハウス(軽費老人ホーム)

 

自立~軽度の介護度の人が入居できる施設です。まだ元気だけどひとり暮らしが不安なときに利用するとよいでしょう。ただし、身内からの介護が期待できないなど条件があります。数が少ないため地域によっては提供されていないところもあります。

 

●サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

 

60歳以上であれば、元気な方、要介護状態にある方も入居できます。一般的な賃貸住宅だと高齢者は大家さんから避けられ契約がしにくい状態ですが、ここは高齢者専用賃貸住宅なので安心です。他の入居施設で見られるような、長期入院を理由とした一方的な解約もありません。一定の広さがあり、バリアフリーで廊下などには手すりが設置されています。

 

生活相談や安否確認のサービスを受けることができ、訪問介護や通所介護、クリニックが併設されているところもあり、地域の介護、医療サービスを受けやすいよう配慮されています。離れて暮らす場合、親の独居は心配の種です。有料老人ホームはまだ早いかなと思ったら、ひとつの選択肢にしてみましょう。月ごとの賃料は20万〜30万が必要になりますが、入居時の一時金は通常の敷金礼金レベルです。

 

認知症の親ならグループホームか特別養護老人ホームのユニット型個室を

 

介護相談員として色々な施設を訪問していますが、個人的な推しは、グループホームか特別養護老人ホームのユニット型です。ここは、1ユニット定員9人制でスタッフにもゆとりが感じられます。個室でゆったりしている上、慌ただしさが少ないように思います。認知症の症状があってもマイペースで過ごせている印象です。

 

特別養護老人ホームでもユニット型は、多床室よりも居室代が高いので、全ての施設ではありませんが外出もユニット型の利用者を優先する傾向もあります。

 

グループホームは看取りを行う施設が増えた関係で介護度が上がってきていますが、以前はある程度の自立が入居の条件にあったため、車いすの人が利用する機械浴を備えていないところもあります。その場合、重度の人はシャワー浴になってしまいます。湯船に入る入浴は楽しみのひとつでもあるので、この条件が譲れない場合は、見学の際に設備を確認しましょう。

 

有料老人ホームは高額で、特別養護老人ホームはいつ入居できるかわからないため、中間的な位置づけのグループホームへの希望者が増えています。ここは、看護師の設置義務はないので毎日はいませんし、台所、食堂、浴室は基本的に共同です。それでも、個室がありプライバシーが守られるのは、毎日の生活の中では高ポイントで人気があります。

 

 

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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