共働き世帯の増加による家事の時短ニーズや、アレルギー疾患対策の健康志向の高まりなどにより、コインランドリーの数が増えています。この背景を受けて「コインランドリー経営」を始める経営者もいますが、そこには事業投資以外の目的もあるようです。税理士法人グランサーズの共同代表である黒瀧泰介税理士が解説します。

機器を退職金代わりに「現物支給」して節税する方法

最後に少し変わった事例ですが、コインランドリー運営を退職時の現物支給として扱う方法をご紹介します。

 

コインランドリーの建物工事や機器は、次表のように、時間が経てば減価償却費の計上によって、帳簿上の価額が下がっていきます。

 

※当初の出資額3,000万円のうち、建物1,000万円、機器2,000万円として計算 ※ランドリー機器は、リースでなく新品を購入し、定率法で試算 ※建物は、主要な鉄骨の肉厚が3mm以下の鉄骨造で、定額法(19年)で試算
※当初の出資額3,000万円のうち、建物1,000万円、機器2,000万円として計算
※ランドリー機器は、リースでなく新品を購入し、定率法で試算
※建物は、主要な鉄骨の肉厚が3mm以下の鉄骨造で、定額法(19年)で試算

 

たとえば、コインランドリー機器の法定耐用年数は13年なので、コインランドリー事業を開始してから13年後に会社を勇退するケースを考えてみます。

 

この場合、退職金としてこのコインランドリーを現物支給で受け取ると、コインランドリー機器は法定耐用年数を経過しているため、簿価は1円。建物の減価償却が一部残っていますが、出資時は簿価3,000万円だったのが簿価311万円になっています。

 

退職金の代わりに現物支給とした場合は、「退職所得」として所得税等の課税対象になります。退職所得は、所得額から次の退職所得控除額を差し引いて計算します。

 

◆勤続年数20年以下の場合

退職所得控除額=勤続年数×40万円

 

◆勤続年数20年超の場合

退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20年)

 

先ほどの例で、13年経過したコインランドリーを、勤続年数20年で受け取る場合、

 

退職所得={311万円–(40万円×20年)}×1/2=-244.5万円となります。

 

退職所得がマイナスになりますので、一切税金はかからないことになります。

 

これに対し、現金3,000万円を退職金として受け取る場合、課税される額は、

 

3,000万円–(40万円×20年)=2,200万円となります。

 

課税される所得の額を2,200万円も減らすことができるため、数百万円の節税になります。しかも、その時のコインランドリーは、実際には簿価311万円以上の価値があります。

 

なぜなら、洗濯乾燥機や乾燥機は寿命が長いため、十数年経っていたとしても、変わらず稼働して収益を上げ続けるからです。

 

このように、コインランドリーをご自身の退職金代わりに現物支給として受け取ることで、実質的に所得税の大幅な節税になります。そして、その後の収益を自分のものにすることができるのです。

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表 公認会計士・税理士

 

 

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