(※写真はイメージです/PIXTA)

定年前後はお金に関する様々な誘惑があり、危険な罠にはまって老後破綻に陥る人もいます。しかし、50歳を過ぎたらするべきこと、してはいけないことを知っておけば、老後のお金の不安は解消できます。今回は、定年後に安易に地方移住し、蕎麦屋を開業して失敗したケースを基に注意点を見ていきます。※本連載は、山中伸枝氏の著書『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

2年後。Gさんは浮かない顔で東京に向かう飛行機の中にいました。

 

「蕎麦屋を開きたいという想いだけが先に立ってしまい、どうすればお客さんを集められるのかまではいっさい考えていなかった。考えてみれば、あんな田舎の過疎地帯でお客さんがどんどん来るはずないよな。観光地でもないし……」

 

ということで、蕎麦屋はモノの見事に失敗しました。この2年間、東京には一度も帰らず、ただひたすら、いくら待っても来ないお客さんのために原材料を仕入れ、蕎麦を打ち続けましたが、いよいよ限界でした。売上げが立たなければ、店を維持することができません。不幸中の幸いだったのは、店員を雇わなかったので、人件費がほとんどかからなかったことくらいでしょうか。それでもGさんは食べていくことができず、2年でついに白旗を上げました。

 

挫折感を抱えて自宅に帰ったGさんですが、さらに追い打ちをかける出来事が待っていました。妻からの離婚届です。

 

自分に内緒で3000万円もの隠し財産をつくり、しかも勝手に蕎麦屋を始めたことに対して、怒り心頭だったようです。営業を開始するとき、妻がお金の出所を追及しようとしながらも途中で何も言わなくなったのは、Gさんを許したのではなく、あまりの怒りに何も言えなくなったからでした。

 

夫婦なのに、自分がやりたいことのためだけに裏でコソコソ資金をつくり、それを勝手に使って蕎麦屋を始め、「俺はお前が出してきた条件をちゃんとのんだ。退職金には手を付けていないからな」という態度が、どうにも許せなかったのだそうです。

 

結局、離婚することになりました。Gさんは離婚協議で財産の半分を要求しましたが、株式投資で増やした3000万円も夫婦の共有財産とみなされ、退職金はまるまる妻のもとへいくことになりました。しかも、自宅の売却代金も大半が妻のものになりました。

 

Gさんはとりあえず仮住まいとして6畳一間のアパートを借りたものの、ここから先は完全なノープランです。手元にある現金は、自宅を売却して得た500万円程度。すでに63歳となり、年齢的に就職したくても、なかなか働く先が見つかりません。

 

公的年金を受給できるまであと2年。果たしてGさんは生き残れるのでしょうか。公的年金が受け取れるようになっても、離婚したGさんの場合、厚生年金の半分は妻のものになります。実際に受け取れる金額は、かなり少なくなることを覚悟しなければなりません。

 

「それでも2年間、自分の好きなことにチャレンジできたのだから悔いはない」と強がるGさんですが、その代償はあまりにも大きいものになりました。

 

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