定年前後はお金に関する様々な誘惑があり、危険な罠にはまって老後破綻に陥る人も多いです。しかし、50歳を過ぎたらするべきこと、してはいけないことを知っておけば、老後のお金の不安は解消できます。今回は、60歳で定年退職した元部長が転職し、給料が半減したにも関わらず浪費を繰り返して家計が毎月赤字になっている事例の解決策を紹介します。※本連載は、山中伸枝氏の著書『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

 

妻は素早く行動に移りました。自宅の水洗トイレのタンクにはペットボトルを入れ、洗濯する際には前日のお風呂のお湯を使うようになったのです。そのほかにも、どこで手に入れたのか、節約本や雑誌の節約特集を読みあさり、そこに書かれている節約ノウハウを積極的に取り入れるようになりました。

 

Fさんは、「妻もようやく気付いてくれたか。これで一安心だ」と思ったものの、数ヵ月経って家計簿を見て愕然としました。ほとんど赤字が減っていないのです。理由は明らかでした。支出が大きすぎて、自宅の水洗トイレのタンクにペットボトルを入れるといった程度の細かい節約ノウハウでは、もはや家計を立て直すのは困難な状況に陥っていたのです。

「月々の支出は急には減らせない」と心得ておく

50代半ばまでの自分を振り返ってみてください。特にお金の使い方です。「老後のために節約しなきゃ」などと思っていても、なかなかお財布の紐が締まらず、つい無駄なお買い物をしてきてしまったという人は、けっこう多いのではないでしょうか。

 

それも無理はありません。50代半ばで役職定年を迎えるまでは、給料も増えているのですから。「まあ、何とかなるだろう」という気持ちになるのは当然なのです。でも、50代半ば以降は、上手なお金の使い方を心がけることが大切です

 

Fさんの場合、60歳まで部長職を務められたことが、逆にあだになりました。55歳で役職定年になれば、収入は徐々に減っていくので、そこから徐々に消費をスローダウンさせ、支出をコントロールしていけるはずですが、Fさんは60歳まで給料も多かったので、転職先で急に給料が半減したことに対応し切れなかったのです。

 

もちろん、その現実に目を向けて、妻と話し合って節約することを決めた点は、評価してもいいと思います。ただ、問題だったのは些末な節約術に走ったことでしょう。

 

よく、「お風呂のお湯を捨てずに洗濯水として使用する」とか、「水洗トイレのタンクの中にペットボトルを入れて水道料金を節約する」といった節約術が、雑誌などで披露されていますが、正直、この手の些末な節約術は、少なくともいまのFさん夫婦にとっては、何の役にも立ちません。

おすすめの節約術…「大きな支出」を伴うものから削減

この手の節約術は、他の経費削減をあらかた行い、いよいよカラ雑巾を絞るという段階になって、初めて使う手段です。

 

正直、この手の節約術を行ったとしても、月に節約できる金額は1000円程度のものではないでしょうか。1000円を節約できたとしても、何しろFさんの家計は毎月10万円以上の赤字ですから、焼け石に水のようなものです。効果ゼロといってもいいでしょう。

 

こういう場合の赤字削減は、とにかく大きな支出を伴うものから切っていくことをお勧めします。

 

● 自動車は本当に必要なのか?

● 子供が独立したいま、本当にこんな大型保障の保険が必要なのか?

● 老後の楽しみではあるけれども、週に2回もゴルフに行く必要があるのか?

● 同じように妻の週2回のランチ会は本当に必要なのか?

 

このあたりから支出を見直していけば、毎月の赤字はかなりの程度まで圧縮できるでしょう。

 

山中 伸枝

株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役

 

 

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50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話

50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話

山中 伸枝

東洋経済新報社

定年前後の5年間、お金との付き合いには罠がいっぱいあります。老後の生活が始まる前に破綻してしまう人もいるくらい、とっても危険な罠です。この本では、その危険な罠にはまらないよう、筆者自身が実際に本人たちから聞いた…

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