「実家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母親が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。日本の高齢化は進み、高齢者と後期高齢者という家族構成が珍しくなくなってきた。老いと死、そして生きることを考えていきます。本連載は松原惇子著は『母の老い方観察記録』(海竜社)を抜粋し、再編集したものです。

サウナで聞いた心温まる70代後半主婦の夢

高齢者は時間があるのだから、みんなでアンパンマンになるのは、どうですか。自分の子供や孫に遺産を遺すことより、今、困っている人のために働くのはどうですか。老人党ができたら、議員になって日本を変えたいわ。

 

スーパーボランティアが、各地でたくさん出てきたら、高齢者が若者から尊敬され、素晴らしい日本を取り戻せるような気がする。

 

またサウナでの話になって恐縮だが、この間、にこにことした感じのいい70代後半の主婦の方と一緒になった。

 

「地球温暖化でどうなるのかしらね」という会話から、この先の生き方の話になった。びっくりしたのは、一見、政治に無関心で孫のことしか考えていないような雰囲気の人でさえ、社会の変化に敏感になっていることだった。

 

二人きりだったこともあり、話がはずんだ。すると、彼女は「わたしね。実は夢があるの」と切り出した。聞くと、もう十分に幸せに暮らしてきたから、何も欲しくない、お米と野菜があれば十分だ、と。今後は、田舎で、孤独な子供たちが自由に来られる家を借りて、少しでも元気になれるお手伝いをしたいと目を輝かせた。

 

「主人も料理が好きなので、一緒にそんなことして暮らしたいなあって」

 

名前も知らないおばさんとおばさんの会話だったが、温かいものが体の中を駆け抜けたのは、サウナの中だったからではなさそうだ。

 

 

 

 

松原 惇子
作家
NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク 代表理事

 

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母の老い方観察記録

母の老い方観察記録

松原 惇子

海竜社

『女が家を買うとき』(文藝春秋)で世に出た著者が、「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。 おしゃれ大好き、お出かけ大好…

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