ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

要介護2までは民間サービスでも乗り切れるが…

住まいの危険サイン

 

高齢になると身体機能が低下し、転倒リスクが高まります。手すりがついていても、階段昇降が難しくなる場合が多くあります。玄関の段差もチェックしてください。私の父も晩年、実家では2階は全く使わず、全て1階で暮らしていました。家の中に目が行きがちですが、アパートやマンションの住まいが2階以上である場合も注意してください。

 

転倒をきっかけに入院すると、退院後、住み続けることができないリスクがあります。エレベーターがあれば問題はありませんが、ない場合、通所デイサービスの送迎に、時間や人数を要してしまい症状によっては契約を断られる場合もありますので注意してください。

 

エピソード

 

要介護2くらいまでなら、入浴や食事は介護保険や行政、民間のサービスで乗り切れると思います。盲点は、体調不良時の対応です。介護のサービスも利用計画に沿っての実施のため、日時が限られています。誰かが気にかけて訪問しないと、倒れたままのことも多いのです。

 

家族と同居の場合、日中はひとりでも民生委員などの訪問が対象外になります。見守りサービスも呼ぶことができなければ契約の効果が半減してしまいます。もし、頻繁に体調が悪くなることが増えてきたと感じたら、施設を検討する時期かもしれません。

 

また、同居すると認知症でない限り、親が露骨に邪魔者扱いされているのではと感じることがあります。ひとりだけ別の食事、仲間に入れない会話、汚いモノ扱い、死ねば喜ばれると思う被害妄想をする場合もあります。認知症でない高齢者は家族内孤立がつらいのです。ひとり暮らしや施設がラクという高齢者を何人も見てきました。

 

私は、認知症の母の在宅介護を続けていますが、最初から在宅と決めていたわけではありません。その当時、ある医学書に認知症の余命は3年から5年と記されていました。あと数年しか生きられないのなら、せめて最後は一緒に暮らそうと思ったのです。わが家の場合は認知症発症後10年たちますが生存中です。予定外といえばそうなります。

 

ただ、感じるのは母が認知症であったから同居ができているという点です。ときにはバトルになりますが、数分後には笑っていますし、こちらも認知症だからと割り切れます。在宅介護のメリットは、家族と一緒の生活ができる、介護サービス費用が抑えられること。デメリットは、家族の自由が減る、夜間も介護など心身両方の負担が大きい、生活スタイルの変化に家族間トラブルになることがあるかもしれません。

 

いずれにせよ、在宅介護を選択したのなら、食事は手づかみも許す、歩けないなら這っても良い。そのくらい気楽な気持ちでいることが大切です。同居での在宅介護はいつまでできるのかという質問もよくあります。要介護いくつだからではなく、重くても軽くても家族が在宅を続けられなくなるときが限界です。

 

子もギリギリまでやりきったと思えれば、親を施設にお願いしたことを後悔することも少ないかもしれません。当然ですが、良い施設は沢山あります。自宅で喧嘩や罵り合うより良いかもしれません。在宅介護か施設介護かは、家庭の事情それぞれだと思います。介護保険制度ができて在宅介護はしやすい環境になったとも思います。お金があるから、すぐに施設に入れようで良いのかとも思います。世間一般の言葉に流されないで、自分がどうしたいのかを考えてみてください。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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