負債650億円から復活劇…「大衆からの支持こそ成功への近道」

宗吉敏彦はリーマンショックに巻き込まれ650億円の負債を抱えて倒産。いったん経済の表舞台から姿を消した。リーマンショックで地獄に堕ちた男はアジアで再起のチャンスをいかに掴んだのか。宗吉とともに躍進するアジア不動産市場の潜在力と今後の可能性を探る。本連載は前野雅弥、富山篤著『アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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大衆がうなずいてくれる商品しか勝ち残れない

クリードが急成長、2部上場にこぎ着けたあたりで宗吉敏彦は有頂天になるどころか、鬱になってしまった。宗吉を知る人は口をそろえて「あれは絶対に鬱になるような男ではない」と言うが、夫人に言わせると「外では元気だったが、家に帰ると塞ぎ込んでいた。明らかに鬱だった」という。

 

大衆からの支持こそ成功への近道

 

当時、沈みっぱなしの宗吉の気持ちとは裏腹に、会社は極めて好調だった。不動産投資信託(REIT)にも参入、会社の売上高、利益はともに驚異的なスピードで拡大していた。

 

半面、上場したことで経営は自由度を大きく失った。株主などステークホルダーに配慮した経営を余儀なくされ、常に利益を上げ続けることを強いられるようになってしまった。宗吉が本当にやりたいのは会社を大きくするためだけの仕事ではない。付加価値の高い仕事や息の長い街づくり。やっていてわくわくする面白い仕事だった。会社の経営が健全であることはもちろん大切だったが、稼ぐだけの仕事には何の興味もなかった。

 

経済の発展度合いにはそれぞれ5年~10年ずつ差があり、この時差をうまく活用するという。(※写真はイメージです/PIXTA)
経済の発展度合いにはそれぞれ5年~10年ずつ差があり、この時差をうまく活用するという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

だからクリードが破綻し再建計画を完了させた時、夫人は宗吉にこう言った。

 

「これで、ようやくあなたのやりたいことができるじゃない」

 

ステークホルダーの呪縛から解き放たれた瞬間だった。

 

しかし生活は火の車だった。乗り慣れた外車も売り、手持ちのものはすべてなくなった。子どもたちには外出時、自動販売機で飲み物を買わなくていいように水筒に水を入れ持たせた。変人、宗吉に連れ添う夫人の苦労は並大抵ではなかった。生活は激しく浮き沈みを繰り返した。

 

「本当に大変」

 

ただ、人は変わっていても、ビジネスの進め方は覇道を選ばない。宗吉は常に王道のビジネスを選ぶ。基本とするマーケットはそれぞれの低所得者層から中間所得者層。そこに品質の高い住宅をできるだけ妥当な価格で供給する。

 

しかも1戸1戸、消費者の顔を見ながら売っていく。期日は守る。間違ってもファンドへの丸投げ、利益だけかすめ取るような手法はとらない。実に当たり前に、そして愚直に真っすぐに攻める。ビジネスの王道を外さないのだ。ここが宗吉の不思議なところでもある。

 

おそらく照れもあってか口にこそ出さないが、宗吉には「大衆に支持されるきちんとしたビジネスこそ成功への近道」との信念がある。確かに戦後日本で、この信念に従ってものづくりを進めてきた会社が成功を収めた。パナソニック、ソニー、トヨタ自動車、大和ハウス工業……。いずれもが戦後日本の大衆を捉え、大衆が豊かになるスピードと歩調を合わせながら会社も発展を遂げてきた。

 

宗吉は、その高度成長期の日本の成功モデルを今度は東南アジアの国々に当てはめようとしている。経済の発展度合いにはそれぞれ5年~10年ずつ差があり、この時差をうまく活用するのだ。

 

まず日本の高度成長期の成功モデルをタイで試し、そこで成功すると今度はインドネシア、次にベトナム……。まるでタイムマシンで時間を遡ぼるようにビジネスを広げていくのだ。その際、決して踏み外してはいけないと宗吉が考えているのが「売り上げはお客様(中間大衆層)への役立ち高」という松下電器産業(現パナソニック)の松下幸之助流の考え方なのだ。大衆がうなずいてくれる商品、サービスでなければ結局は最後まで勝ち残れない。長続きもしない。

 

「清明正直(きよく・あかるく・ただしく・まっすぐに)」―。

 

この基本中の基本こそビジネスの要諦であることを宗吉はわきまえている。

クリードグループ 代表

1965年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、伊藤忠商事に入社。不動産開発やコーポレートファイナンスに従事したのち、1996年クリードを設立。
当時の国内不動産業界で一般的でなかったDCFの概念を取り入れた不動産投資・評価にいち早く着目し事業をスタート、私募不動産ファンド・REIT運用等を手がける。
2012年からは、マレーシアを皮切りに本格的に東南アジアでの不動産投資に着手。現在、シンガポールに拠点を移し、マレーシア、カンボジア、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナムで事業を展開している。

著者紹介

日本経済新聞 記者

東京経済部で大蔵省、自治省などを担当後、金融、エレクトロニクス、石油、ビール業界等を取材。現在は医療、不動産関連の記事を執筆。著書に『田中角栄のふろしき』(日本経済新聞出版社)がある。

著者紹介

日本経済新聞 記者

2014年よりハノイ支局長としてベトナム全般を取材。現在は日経産業新聞の海外面デスクを務める一方、外国人労働者問題、ASEANなどを取材。著書に『現地駐在記者が教える 超実践的ベトナム語入門』(アスク出版)がある。

著者紹介

連載リーマンの敗者、沸騰するアジアの不動産市場で奇跡の復活

アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」

アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」

宗吉 敏彦 前野 雅弥 前野 雅弥

プレジデント社

クリードの奇跡の主人公、宗吉敏彦は、2009年1月9日、リーマン・ショックに巻き込まれ650億円の負債を抱えて倒産。いったん経済の表舞台から姿を消したものの再びアジアで復活したかと思ったら、世界的な新型コロナウイルスの…

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