Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

資本主義が拡大し続けるようにアートも拡大する

このように資本主義が拡大し続けるように、アートも拡大を続けていくでしょう。2008年に起こったリーマンショック以降、資本主義の限界を指摘する声もあり、アートも常に終焉を迎えると言われ続けてきましたが、リーマンショックの時を除いて実際にアート市場は拡大し続けているのです。興味深いのは、アート市場が天井知らずに見えることです。

 

美と人間の欲望には限界がない

 

世界最大級のアートフェアであるアート・バーゼルとスイス最大の銀行「UBS」が、2018年の世界美術品市場を分析するレポートを公表しました。

 

2018年における世界の美術品市場は6パーセント成長し、市場規模は推計674億ドル(約7兆5000億円)に達し、2004年に300億ドル台に乗って以来、先ほどのリーマンショックにも負けず、アート市場は拡大を続けています。その背景には、アジア市場やオークション市場の好調、オンライン取引の増加もあるようです。

 

マーケットだけでなく、アート自体も拡大を続けています。それは、美しさには限界がなく、無限に発見することが可能だからです。

 

例えば障がい者アートや専門的な教育を受けていない人が制作するアート(これらを総称してアール・ブリュットという)やオーストラリアの先住民族であるアボリジニの制作するアート(インディジナス・アート)、中南米の素朴な土産物から発達した現代アート化したプリミティブアート、さらには日本の民芸など、これまでアートとして認識されてこなかったものが、近年は新たなアートとして評価されています(ちなみに民芸は海外でそのまま“Mingei”で通用します)。

 

このようにアートの価値は、限界を迎えることなくどんどん発見され続けているため、マーケットも拡大し続けるのです。どんなものでも貪欲にアートに変えてしまう現代アートにかかれば、ニュース番組でよく話題になるゴミ屋敷さえも、アートとして認められる日が来るかもしれません。

 

昨日までアートではなかったものが、今日はアートになりうるのです。これと同様に、ビジネスにおいても昨日まで価値として認められなかったものが、今日いきなり価値を持つ可能性も考えられます。

 

美に限界がないように、人間の欲望にも限界がないためです。

 

 

秋元 雄史
東京藝術大学大学美術館長・教授

 

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