兄弟経営をしている会社において、兄弟の不仲が原因で事業承継が上手く進まなくなった失敗例から学んでいきましょう。※本連載は、中野公認会計士事務所の著書『失敗しない理由がある 事業承継の成功例失敗例』(中央経済社)より一部を抜粋・再編集したものです。

子を後継者に考えた場合、円滑に事業承継をするには?

嵐山産業の後継者として、清一は長男である清一郎を考えています。清一と順二は兄弟なので、不仲といえどもお互いの性格をある程度理解してそれなりの対応ができました。順二と清一郎は、叔父と甥の関係になるため、年齢も離れておりコミュニケーションが取れていませんでした。

 

このような状況下での事業承継は非常に難しいことです。順二は自分より30歳ほど若い清一郎が代表取締役になることは面白くないでしょうし、清一郎も年上でうまくコミュニケーションが取れない叔父が、専務として役員に残ると余計な気を遣い経営に専念できません。

 

清一郎に事業を引き継がせるときは、タイミングも重要です。少なくとも順二には役員を退いてもらうべきです。おそらく、現状の兄弟関係からすると順二と同時に清一も退任しなければ順二は納得しないでしょう。

 

その後、息子の清一郎の要請があれば、相談役や顧問という立場で会社に戻り、経営をアドバイスする方法も考えられます。そうなると清一郎が事業を引き継いで円滑に経営できる体制を作ることが、清一の使命になります。

次世代へ事業承継する「タイミング」が重要に

●別会社の活用と権限委譲

せっかく別会社という受け皿があったのに、権限を委譲しなかったために、うまく活かすことができませんでした。

 

関東と関西に支店があるのであれば、地域で会社を分けることも考えられますし、製造と販売を行っているのであれば、製と販で会社を分けることも考えられます。それぞれが一国一城の主として経営に励み、兄弟で切磋琢磨することで業績の向上に繫がっていたのではないでしょうか。

 

別会社を兄弟で経営していくには、お互いが干渉しすぎないことが重要です。ある程度の距離を保ちながら、お互いが自社の経営に専念し助け合っていくのが理想的です。

 

中途半端な規模や、独立できない業務形態の別会社であれば、兄弟に任せたとして、別会社化のメリットを享受することは困難です。一方の会社が、もう一方の会社の尻拭いばかりをしているようでは、別会社であることはデメリットでしかありません。

 

●次世代への事業承継の注意点

兄弟で会社経営をしている場合、役員を退き、次世代へ事業承継するタイミングも重要です。兄弟不仲であれば、兄である清一は会社に残り、弟である順二だけを退職させるというのでは、順二が納得しないでしょう。

 

逆に、兄である清一が先に退職した場合は、後継者である息子の清一郎が、叔父である順二に気を遣い、思うような会社経営ができない状況になる可能性があります。次世代に事業承継する場合は、一旦、兄弟2人とも退職すべきでしょう。

 

中野公認会計士事務所

 

※本記事の事例に登場する名前はすべて仮名で、個人が特定されないよう内容に一部変更を加えております。

 

 

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