こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

35歳で蔡英文政権に入閣することになった

デジタル担当政務委員就任のオファーと受諾した理由

 

私の政治参加意識はこのようにして育まれてきたのですが、私自身が政治的なものに初めて関与したのは、十五歳の頃でした。インターネットで利用される技術の標準を策定するIETF(インターネット技術特別調査委員会)という組織で、インターネット上の規制作りに参加したり、ウェブ技術の標準化を行う非営利団体のW3C(World Wide Web Consortium)で通信ルールの取り決めを行うなど、インターネットという世界のルール作りに関与したのです。

 

インターネットには国境がないため、「国家」という概念は存在しませんが、これらの仕事はすべて政治のようなものでした。現在のデジタル担当政務委員の仕事も、それと同じようなものだと私は捉えています。だから、政務委員のオファーがあったときも、とくに戸惑うことはありませんでした。

 

一つ裏話をすると、蔡英文総統の民進党政権が発足する前、政府から私のところに「新設するデジタル担当政務委員の候補者を推薦してほしい」という依頼があったのです。しかし、なかなか適当な人物が見つからず、結局、私に就任要請が来ることになりました。

 

要請を受けたとき、「面白い」と思いました。社会には様々な立場があり、私が目指す公益を達成するためには、共通の価値観を見つけていく必要があります。ところが、そのような仕事を行っている人は、今まで誰もいませんでした。それは私がもともと興味を持っていた分野だったので、「自分にはその手助けができるのではないか」と思ったのです。

 

ただ、すんなりOKしたわけではありません。三つの条件を出しました。一つ目は「行政院に限らず、他の場所でも仕事をすることを認める」こと、二つ目は「出席するすべての会議・イベント・メディア・納税者とのやりとりは、録音や録画をして公開する」こと、三つ目は「誰かに命じることも命じられることもなく、フラットな立場からアドバイスを行う」ことです。

 

この三つの要望に対して、当時の林全行政院長からはすぐに、「問題ないですよ」という返答がありました。それで私は、デジタル担当政務委員の職を引き受けることになり、35歳で蔡英文政権に入閣することになったのです。

 

 

 

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

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