35歳で蔡英文政権に入閣することになった
デジタル担当政務委員就任のオファーと受諾した理由
私の政治参加意識はこのようにして育まれてきたのですが、私自身が政治的なものに初めて関与したのは、十五歳の頃でした。インターネットで利用される技術の標準を策定するIETF(インターネット技術特別調査委員会)という組織で、インターネット上の規制作りに参加したり、ウェブ技術の標準化を行う非営利団体のW3C(World Wide Web Consortium)で通信ルールの取り決めを行うなど、インターネットという世界のルール作りに関与したのです。
インターネットには国境がないため、「国家」という概念は存在しませんが、これらの仕事はすべて政治のようなものでした。現在のデジタル担当政務委員の仕事も、それと同じようなものだと私は捉えています。だから、政務委員のオファーがあったときも、とくに戸惑うことはありませんでした。
一つ裏話をすると、蔡英文総統の民進党政権が発足する前、政府から私のところに「新設するデジタル担当政務委員の候補者を推薦してほしい」という依頼があったのです。しかし、なかなか適当な人物が見つからず、結局、私に就任要請が来ることになりました。
要請を受けたとき、「面白い」と思いました。社会には様々な立場があり、私が目指す公益を達成するためには、共通の価値観を見つけていく必要があります。ところが、そのような仕事を行っている人は、今まで誰もいませんでした。それは私がもともと興味を持っていた分野だったので、「自分にはその手助けができるのではないか」と思ったのです。
ただ、すんなりOKしたわけではありません。三つの条件を出しました。一つ目は「行政院に限らず、他の場所でも仕事をすることを認める」こと、二つ目は「出席するすべての会議・イベント・メディア・納税者とのやりとりは、録音や録画をして公開する」こと、三つ目は「誰かに命じることも命じられることもなく、フラットな立場からアドバイスを行う」ことです。
この三つの要望に対して、当時の林全行政院長からはすぐに、「問題ないですよ」という返答がありました。それで私は、デジタル担当政務委員の職を引き受けることになり、35歳で蔡英文政権に入閣することになったのです。
オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)
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