革命と継承…日本で破壊的イノベーションが起きない根本原因

Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

オランダで起きたチューリップバブルの教訓

「使用価値」と「交換価値」

 

ここからは、現代アートのマーケットがどのように変化してきたか、アートと資本主義の関係も含めて解説します。

 

現代アートが何百万、何千万といった価格で取引されるのは一体、なぜでしょうか? まずそのためには、「使用価値」と「交換価値」の概念を理解する必要があります。「使用価値」とは、商品そのものが日常生活の中で使われることによって生まれる価値のこと。「交換価値」とは、その商品を他の商品と交換するときの価値のことで、相手がその商品にどれだけの価値を見出しているかにより変化するものです。

 

「使用価値」はほとんどないけれども「交換価値」の高いもの、その最たるものがお金です。例えば1万円札は、メモにも鼻紙代わりにもなりません(実際にそのように使う人もいるかもしれませんが相当変わった人でしょう)ので、使用価値はほとんどありません。

 

日本国がそれを法定通貨として「1万円の価値がある」と保証しているために、1万円分の「交換価値」があるのです。ちなみに1万円札の原価は、わずか22円です。

 

1万円札と同じように、アートも実用性に乏しく、飾って楽しむくらいの「使用価値」しかありません。多くは原価もきわめて安価のため、アーティストは原価という発想すら持ち合わせていないかもしれません。

 

ただし、作品に込められた作者の思いや哲学が、人々から「価値がある」、つまり芸術として認められれば、その希少性ゆえに「交換価値」がぐっと高くなり、お金と同じように「使用価値」と「交換価値」の乖離が起こってきます。

 

投資対象としての作品

 

歴史を遡ると使用価値と交換価値が大きく乖離した典型例を見つけることができます。17世紀にオランダで湧き上がったチューリップ・バブルです。

 

鑑賞品としての使用価値しかないチューリップですが、ピーク時には、球根1個で馬車24台分の小麦、豚8頭、牛4頭、ビール大樽4樽、数トンのチーズ、バター2トンが全て買えるほどの高値がつきました。

 

単なるチューリップにそれだけの値段がついたのは、お金を出す人々が交換価値を認めたからです。有用性の低いもの、使用価値の低いものほど価値が転換して上昇し、それによって「交換価値」がどんどん上がっていくのですが、アート作品はまさにそのような存在で、まさに資本主義のパラドックスを見事に体現するものです。

 

そうした「交換価値」から、アート作品は、投資対象としても大変人気があります。数万円で購入した現代アート作品が十数年を経て、その何百倍となることもあるからです。かつて1500円程度で売られていたこともある奈良美智さんのドローイングは、今では何百万の値がついています。

 

私がベネッセ時代に購入に携わった、デイヴィット・ホックニー、フランク・ステラ、ジョージ・リッキー、サイ・トゥオンブリー、サム・フランシスといったアメリカの一流の現代アーティストたちの作品も、今オークションに出せば、購入価格の数十倍で落札されるでしょう。こうした価値の伸びしろの大きさや、持ち運びやすさ、ステータスの証明であることなども、アートが投資対象とされる理由です。

 

またアートに対する投資は、資本主義社会における株や不動産投資などと同様に「これから成長する地域」に向けられてきました。

 

アートのマーケットの中心といえば、その昔はフランスやイギリスでしたが、第二次世界大戦後はアメリカとなり、80年代バブル期は日本、今は、中東、中国、そしてインドへと移っています。経済の成長センターの移動とともにアートのマーケットも移動しているのです。現在、中国の美術市場は米国に次いで2位ですが、遠くない将来にトップに躍り出ることもありうるでしょう。そうした成長の余地がある場所に、資本は常に移動していきます。

 

秋元 雄史
東京藝術大学大学美術館長・教授

 

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東京藝術大学大学美術館 館長、教授 練馬区立美術館 館長

1955年東京生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科卒業後、作家兼アートライターとして活動。

1991年に福武書店(現ベネッセコーポレーション)に入社、国吉康雄美術館の主任研究員を兼務しながら、のちに「ベネッセアートサイト直島」として知られるアートプロジェクトの主担当となる。

開館時の2004年より地中美術館館長/公益財団法人直島福武美術館財団常務理事に就任、ベネッセアートサイト直島・アーティスティックディレクターも兼務する。2006年に財団を退職。2007年、金沢21世紀美術館館長に就任。10年間務めたのち退職し、現職。

著者紹介

連載ビジネスエリートに欠かせない「現代アート」という教養

アート思考

アート思考

秋元 雄史

プレジデント社

世界の美術界においては、現代アートこそがメインストリームとなっている。グローバルに活躍するビジネスエリートに欠かせない教養と考えられている。 現代アートが提起する問題や描く世界観が、ビジネスエリートに求められ…

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