多くの人にとって「マイホーム」は一生に一度きり、しかも人生最高額の買い物でしょう。絶対に失敗するまいと気を引き締めつつ、いざ住宅展示場を訪れると気持ちが舞い上がってしまうもの。そこに「王手」を掛ける営業マンのスゴい手口をご存じでしょうか。販売する側だからこそわかる実態を明かします。※本連載は屋敷康蔵氏の著書『人生を賭けて「家」を買った人の末路』(PHP研究所)より一部を抜粋・再編集したものです。

契約前の「間取りの打合せ」はただのパフォーマンス

ちなみに住宅メーカーというのは、契約前のお客様に対して本腰を入れて間取りの打ち合わせなどは絶対にしません。

 

住宅メーカーもボランティアではないので、契約するかどうか分からない人に対してまで、「本設計」には入らないということです。あくまで資金計画のベースにするための間取り図面であって、実際の設計部門を動かして、構造計算云々(うんぬん)はまだ先の話なんですね。

 

契約前にお客様に提示するプランや図面などは、お客様に対するパフォーマンス的要素が強く、実行図面の土台づくりといったところでしょうか。幸い、今は「設計ソフト」や「間取り作成ツール」といった優秀なCADソフトが巷(ちまた)に溢れているため、パソコン一台あれば素人(しろうと)でも簡単に間取り図面などは作成可能な時代になりました。

 

住宅メーカーはその中でも多少スペックの高いCADソフトを採用し、商談テーブルに設置されたパソコンを使い、営業マンがお客様の目の前でまるでパズルでもしているかのように、いとも簡単にサクサクと間取りを作成していきます。ひと昔前のように「間取りの要望を聞く→手描きで図面を起こす→数日後に提示」という時代ではないのです。

 

図面に変更があれば、お客様の目の前でリアルタイムに修正できる時代なんですね。さらに平面だけではなく、つくった図面を立体的に3Dで見せ、内装材や外壁の色まで選んで反映させることもできます。トドメはその図面を立ち上げ、玄関から入って中を歩くこと(walk in home)までできてしまうわけですから、盛り上がらないわけがありません。

 

ここまで夢に色が付いてしまったお客様は、よほどの理由がない限り、計画自体をゼロに戻すことは考えにくいでしょう。仮に、最初に来場した住宅メーカーで契約しないにしても、3年以内にはどこかのメーカーで契約していることが統計上も証明されています。

「ご予算は?」は要するに「いくらまで借りられる?」

住宅展示場に行った時、ぶしつけに「ご予算はどのくらいでお考えですか?」なんて聞かれて、ちょっとイラッときた経験はありませんか? そんな時、こう思う方も多いのではないかと思います。

 

「そんな、いくらするかも分からないのに、なんと答えたらいいものやら…」

 

通常は、買い物に行く時には、自分の財布にいくら入っていて、目的のものが大体いくらするものなのかくらいは確認してから出かけるのではないでしょうか。でも、住宅だけは皆それをしません。なぜでしょう…。

 

注文住宅の場合、既製品とは違い、ゼロから積み上げていくものなので、金額がなかなか摑(つか)みにくい商品だからではないでしょうか。

 

もちろん、全額自己資金で購入しようと考えている方は話が別です。手持ち金の上限が決まっていますから、それが「予算」となるでしょう。しかし多くの場合、住宅ローンを組んで購入するため、「いくらの住宅を買うか」ではなく、「かかる費用を借りるしかない」という発想の人がほとんどです。

 

そのため気の利いた営業マンなら、お客様にこう聞きます。

 

「お客様の毎月の返済希望額はどれくらいでしょうか?」

 

「予算」などと返答に困るような質問をされるくらいなら、こちらの問いのほうがまだマシではないでしょうか。「毎月の返済希望額」から追えば、自動的に総借入額の上限が割り出され、総借入額の上限が分かれば、その人が住宅にかけられるお金(予算)も具体的になってきます。

 

最終的に残る問題は、そのお客様の希望借入額が、本当に「借りられるかどうか」という点だけです。話は前後してしまいましたが、お客様の「財布の中身」は、そのお客様が「どれくらい金融機関から借りられる人なのか」を意味します。ですから、住宅という買い物は財布の中身(予算)を確定させるためにも、「いくらまで借りられるか」を知ることがとても重要なのです。

 

 

屋敷 康蔵

一般社団法人建物災害調査協会 理事

 

 

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屋敷 康蔵

PHP研究所

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