定年前後はお金に関する様々な誘惑があり、危険な罠にはまって老後破綻に陥る人も多いです。しかし、50歳を過ぎたらするべきこと、してはいけないことを知っておけば、老後のお金の不安は解消できます。今回は、親の資産を知らないまま親が亡くなると、どのような不都合なことが起こるのかについて見ていきます。※本連載は、山中伸枝氏の著書『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

いざというときに備えて、子は親の資産を把握しておく

あなたは親に「いくら財産があるの?」と聞けますか?

 

これがなかなか切り出せない人が多いようです。そもそも日本人は、公の場でお金の話をするのを憚(はばか)る傾向が強いのですが、これは親子の間でもそのようで、親がいま、どのような資産を持っているのかわからないという話はよく聞きます。

 

子供といっても、10歳とか20歳ではなく、60歳になった人でもそうなのです。60年間も親子の関係を続けてきたのに、親が持っている財産で把握しているものといえば、持ち家と自動車くらいだったりします。

 

子供の目で見える範囲の財産は把握できても、銀行預金や保険、証券といった金融資産のように直接、目に入ってこない財産となると、親に聞くよりほかに把握する方法はないのですが、子供は子供で親に対する遠慮のような気持ちが働き、親は子供に対する見栄のようなものがあって、なかなか自分の財産を明かせないというのが、本音なのでしょうね。

 

でも、親の財産を把握していないと、いざ何か事が起こったときに、大変なことになります。

 

たとえば突然、父親が亡くなったとしましょう。その家の財産はすべて父親が一元管理していました。もう最悪です。預金通帳、証券、その他、どこにどれだけの資産があるのか全くわからなくなってしまいます。

 

家の中を探し回って、預金通帳などを1つひとつ発掘していくわけですが、それを現金化するとき、すべての名義が父親だと、銀行もそう簡単に解約に応じてくれません。役所に死亡届を出した時点で、口座が凍結されてしまうのです。

 

といっても、故人のキャッシュカードを使えば、ATMで現金を引き出せる場合もあります。が、それは凍結されていないから自由に引き出して使ってもいいということではありません。必ず銀行に口座名義人が死亡した旨を伝えて、口座を凍結する必要があります。なぜなら、銀行預金は相続財産になるからです。

 

2019年7月に施工された改正相続法では、150万円を上限に遺産分割前でも現金を引き出せるようになりました。しかし、相続財産である以上、誰かが現金を引き出して勝手に使うと、相続税を計算するときの線引きができなくなります。

 

税務署との無用なトラブルを避けるためにも、この手続きはきちんと行わなければなりません。そのためには、親の財産を子供がきちんと把握しておく必要があります。

 

また、親がインターネット金融機関を使っているときは、どの金融機関に口座を持っているのかに加え、IDやパスワードの管理についても確認しておきましょう。ネット金融機関の場合、通帳などはありませんし、取引明細のやりとりがネット上で行われていたら、どの金融機関に口座を持っているのかさえわからなくなってしまいます。

 

特に夫婦関係が悪い親の場合は、お互い相手に知らせない口座を持っている可能性が非常に高いので、要注意です。

 

山中 伸枝

株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役

 

 

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50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話

50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話

山中 伸枝

東洋経済新報社

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