定年前後はお金に関する様々な誘惑があり、危険な罠にはまって老後破綻に陥る人も多いです。しかし、50歳を過ぎたらするべきこと、してはいけないことを知っておけば、老後のお金の不安は解消できます。今回は、「老後の資金作り」のために多くの生命保険に入ることの是非について考えていきます。※本連載は、山中伸枝氏の著書『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

個人金融資産に占める「保険」の比率は約20%と高い

日本人の多くは保険に対して絶大な信頼を置いています。なぜでしょう。個人金融資産は2018年12月末時点で1830兆円あるのですが、この53.8%に相当する984兆円が現金・預金で、それに次ぐのが371兆円の保険なのです。比率にして20.3%で、これは投資信託の3.7%をはるかに上回ります。

 

不思議ですよね。いまでは投資信託だって積立投資が簡単に行えますし、税制優遇のiDeCoやつみたてNISAで投資信託を積み立てることができるようになりました。それでも圧倒的に、個人金融資産に占める保険の比率が高いのです。

 

確かに昔、一時払い養老保険のように、貯蓄型として大人気を集めた保険商品もありました。これは満期時に加入者が生きていた場合、払込保険料を上回る満期保険金を受け取れるという保険商品ですが、昨今は運用利回りが大幅に低下していて、運用商品としての魅力は大幅に低下しています。

 

にもかかわらず「保険はお得」の残像が目に焼き付いているのですね。そもそも生命保険商品の本分は「保障」にあります。なのに、無理やり「運用商品」に仕立てようとするから、おかしなことになるのです。

 

これは筆者の推測に過ぎませんが、きっと保険会社は個人向けの資産運用ビジネスに乗り出したかったのだと思います。でも、保険会社である限り、純粋な運用商品を募集・販売することはできません。だから、保障と運用を組み合わせた中途半端な保険商品を販売するようになったのではないでしょうか。

 

Cさんが購入した外貨建て生命保険もそうですし、変額年金保険などは、別に投資信託だけで運用すればいいのに、なぜか無理やり保障部分をくっつけることによって保険商品に仕立て上げた、実に奇異な感じのする商品でした。

 

変額年金保険は、保険加入者が保険料を一時払いした後、特別勘定と言われるファンドを選び、運用するというものです。

 

特別勘定は世界中の株式や債券で運用される複数のファンドから構成されており、保険加入者はその中から自分で組み合わせを考えて分散投資したり、あるいはあらかじめ「安定型」「安定成長型」「成長型」というようなリスク・リターンの度合いに応じて選んだりするなど、いくつかのタイプがあります。が、いずれも特別勘定の中身は投資信託です。

 

死亡保険金は一時払いした保険料と同額か、それを多少上回る額になります。また、保険期間が満了した時点で受け取れる年金の額は、特別勘定の運用成果によって決まります。運用成果が芳しくなければ、加入したときに支払った一時払い保険料よりも、受け取る年金の額が少なくなることもあり得ます。

 

山中 伸枝

株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役

 

 

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