「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

課税総所得が900万円以下なら総合課税で確定申告

まず、配当から源泉徴収される所得税の税率は15%です。一方、総合課税で申告をすると課税総所得金額に応じて税率は5〜45%になり、ここから配当控除が10%分差し引かれることになります。

 

ここでもし、課税総所得金額が900万円以下であれば、配当控除を加味すると配当の税率は実質13%になります。もともと源泉徴収されていた15%よりも低くなっていますから、この場合は確定申告をしたほうが得です。

 

ところが、課税総所得金額が900万円を超えると、配当控除を加味しても実質的な税率は23〜40%になるため、源泉徴収されている税率よりも高くなります。つまり、確定申告をすると納税額が増えて損をしてしまうのです。

 

つぎに住民税について考えてみましょう。こちらの結論ははっきりしています。「申告不要制度」を使いましょう。住民税として配当から源泉徴収されている税率が5%であるのに対し、申告をすると10%の税率になってしまうので、損なのです。

 

しかも、配当所得の住民税申告をすると、国民健康保険料が高くなったり、幼稚園の助成金などに影響したりする可能性があるので、申告してもまったくいいことはありません。

 

ちなみに、住民税の申告不要制度の手続きは住んでいる市区町村によって異なります。所得税の確定申告をする前に、住民税の手続きもあらかじめ確認しておいたほうが安心です。

 

あらためて、結論をまとめます。配当所得の所得税については、基本的に「課税総所得金額が900万円以下なら、総合課税で確定申告する」という選択が合理的です。

 

ただし、前年から繰り越している株式の譲渡損失がある場合、または複数の証券口座で取引をしていて、一部の口座で売却損が出ている場合は、申告分離制度のほうが節税できる可能性があるので、試算してくらべてみてください。住民税については、「申告不要制度を使う」の一択です。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年3月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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