いつの時代も高い評価を受けるのは「結果がわかりやすく、目立つ仕事」です。トラブル予防を目的とした地道な作業は、貢献度が高くても正当な評価を受けにくいという現実があります。しかし、「声高な主張」「不当な評価」に気づけないと、本質を見誤って損失を被ることもあるため、注意が必要です。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

個人と社会の「利益の乖離」が、予防接種の足かせに

筆者は予防接種のメリットとリスクについて語るに足る知見はありませんが、仮に、予防接種を受けるメリットとリスクが各自にとって同じだとしましょう。そうなると、「受けに行くのが面倒だから、受けない」という人が増えるかもしれません。

 

しかし、そうなると罹患した人が他人を罹患させるリスクが出てくるので、個々人にとっての損得と社会全体にとっての損得に乖離が生じてしまう可能性があります。そこが感染症の予防接種の大きな問題のひとつだと筆者は考えています。

 

本稿と類似の問題として、個々人のメリットが予防接種の費用を下回るけれども、社会全体のメリットは予防接種の費用より大きいということを『新型コロナのワクチン「全員に無料で接種」が最も効果的なワケ』で論じましたので、あわせてご参照いただければ幸いです。まあ、政府高官が拙稿を読んで無料化を決めたわけではなさそうですが(笑)。

 

筆者は予防接種の効果や副作用等々の知識はありませんが、各国の政府が推奨しているということは、少なくとも社会全体としてのメリットがリスクやコストを上回っているのだと理解しています。ならば、できるだけ多くの人が接種を受けることが望ましいといえるでしょう。

 

筆者も受けるつもりです。理想をいえば、筆者の順番が来る前に多くの人が予防接種を受け、それにより流行が収束し、残りの人たちは予防接種を受ける必要がなくなった…というのが望ましいですが、そんなことを期待するより、順番が来るまで罹患しないことを祈るほうがよさそうですね(笑)。

「デメリット」ばかり強調する報道は問題

人々が新型コロナを恐れる理由のひとつに、マスコミが悲観的な情報を流したがるからだ、という趣旨の話を、『政府の年金運用「儲かっているか、損しているか」答えなさい』 に書きました。それと同様に、マスコミが悲観的な報道をすることで人々が予防接種を怖がり、受けなくなったとすれば、それは問題です。

 

予防接種の副作用に苦しむ人について報道することも必要でしょうが、その際にはぜひ、予防接種を受けた人と受けない人で罹患する確率がどれくらい異なるのか、といった情報もあわせて報道していただきたいと思います。

 

そうすれば「リスクはあるが、メリットもあるから受けようか」と考える国民が増えるかも知れませんから。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義

経済評論家

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