「新型コロナ対策の優等生」とよばれるニュージーランド。2021年2月15日から3日間、2月27日から一週間と立て続けにロックダウンを実施するなど、徹底した感染対策を継続しています。そのような状況でありながら、ニュージーランドの不動産業界はかつてないほどの活況をみせています。オークランド在住で不動産会社を経営する筆者が、現地でしか掴めない不動産事情をレポートします。

オークランド不動産価格の平均値ついに100万ドル突破

ニュージーランドのアーダーン首相は、オークランドで2月15日から3日間にわたる特区ダウンを実施すると宣言。短い期間に国民が安堵したのもつかの間、同月27日から再びのロックダウンを実施しました。解除にいたるまで一週間程度だったものの大きな影響を人々に及ぼしました。

 

このような状況が続いたものの、年度末のオークションは通常通りに開催することができました。Zoomによる開催を余儀なくされるかと思っていましたが、警戒レベルの引き下げに救われました。

 

通常営業に戻ったことでオープンホームの訪問者数も増え、オークランドの不動産価格の平均値も100万ドルを突破。我々の拠点であるウェストオークランド、ニューリン地区の一戸建てにも投資家やファーストホームバイヤーの注目が集まっていました。

 

過去1年間の販売実績をみると、近隣の物件が92万ドル、99万ドルで購入されており、ビジターや仕事仲間も「オークションの落札価格は100ドルは超えるだろう」と話していました。オークション前に執り行われたオークショナーとオーナーたちとの営業状況の報告や、リザーブプライス(最低販売価格)を決定する面談会で「最低価格は95万ドルでもいいが、100万ドルにしてもいいのでは?」という声が出たことで、リザープライズは110万ドルだと思っていた私は「オークションで物件が絶対に売れる!」と確信しました。

 

5組のオークション参加登録を受け、訪問者に「販売価格は100万ドルを超えるでしょう」と話せば、全員納得した様子でした。もちろん、予算に見合わないと判断した人はオークションに参加登録はしません。

 

しかし、オークション前夜、午後9過ぎ。一番の買い手候補だったご夫婦の奥さんから、「今日家を買えたので、明日のオークションは欠席します。グッドラック!」というメールが届いたのです。この予想外の展開には、私も心が折れてしまいました。

 

買い手候補はほかにも4組いるからと気を持ち直しましたが、当然、新たな欠席者がでる可能性もあります。当日になるまで参加者が何人になるかは分かりません。案の定、もう一組から「いい物件を見つけたので」との連絡が入り、合計2組が前日にキャンセルするという状況になってしまったのです。しかし、同日に新たな参加報告をいただき、結果的にプラスマイナスゼロの合計5組でオークションを開催することができました。

 

オークションは90万ドルからスタートし、95万ドル、100万ドル、110万ドルと価格が上昇。つりあがる価格に、会場も次第に熱気を帯びていきます。再度競り合いとなり、ついには111万ドルにまで到達しました。

 

ここまでくれば物件が落札されることは確実ですが、落札の競争相手が別のセールスマンの買い手だったのです。私たちとしては、負けてしまえば手数料が半減するため、譲るわけにはいきません。111万ドルのオファーを出したのは私たちの顧客でしたが、先方がさらに価格をつり上げた場合、我々の顧客は予算オーバーになってしまいます。

 

自分の買い手がオークションに多くいた場合、ほかのセールスマンが顧客を連れてくるため、あまり望ましい状況とはいえません。というのも、ほかのセールスマンの顧客に落札されれば、手数料の半分を持っていかれることになり、私たちの数ヵ月に及ぶ苦労が無駄になりかねないからです。

 

しかし、買い手がいなければオークションは成り立ちませんから、買い手を連れてきてくれる同業者に感謝しなければいけません。手数料が全く入らないよりは、半分は得られる方がいいですから。こういった葛藤がオークション当日には起こるので、心情的には複雑です。

 

こういった事情から、落札される瞬間までは絶対に気を抜けません。「早くSOLDコールをしてくれ」と一心に願いましたが、パブリックオークションで取り乱してはいけないと、冷静さを保ちつつペンを握るしかありませんでした。

 

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