2021年3月、第114回歯科医師国家試験の合格発表があった。出願者数3852人、受験者数3284人、合格者数2123人、合格率は64.6%だった。同時に学校別合格者の状況も発表された。合格率がもっと高かったのは東京歯科大学の94.2%で、慶應義塾大学との合併を発表し、ますます入試の難化が進み、歯科医師試験の合格率でもさらなる上昇が期待できそうだ。ジャーナリストの伊波達也氏が大学別ランキングについて解説する。

歯科大学・歯学部と医科の連携に注目が集まる

次に、出願者に対する受験者の比率を見てみよう。コロナの影響があったかどうかについてはわからないが、ワースト5は、1位は松本歯科大学で65.1%(新卒者95.4%)。2位は神奈川歯科大学で68.9%。3位は日本大学松戸歯学部で72.1%(新卒者81.8%)。4位は岩手医科大学で72.4%(新卒者81.1%)。5位は明海大学(城西歯科大学を含む)で73.6%(新卒者86.0%)という結果だった。

 

いずれの大学も新卒者の受験率は上回っており、特に松本歯科大学は、既卒者その他が足を引っ張っている形になっているのがわかる。

 

ベスト5は、岡山大学、大阪大学、広島大学、鹿児島大学の4校が100%であり、ついで公立の九州歯科大学が99.1%(新卒者は100%)と国立大学が面目躍如だ。総合合格率と同様、に“国高私低”は否めない。

 

歯科大学・歯学部の伝統校『旧六』(旧制歯科医学専門学校のうち戦後大学に昇格した6つの歯科大学)について見てみよう。

 

東京歯科大学は前述したとおり総合合格率1位。日本歯科大学は新潟生命歯学部が3位と健闘したが、本校は12位(総合合格率74.2%/新卒者84.9%)だった。

 

日本大学歯学部は26位(総合合格率50.0%/新卒者53.8%)と厳しい結果に終わった。大阪歯科大学は18位(総合合格率67.0%/新卒者92.0%)で新卒者は90%超えと健闘している。公立の九州歯科大学は9位(総合合格率78.4%/新卒者86.5%)、そして国立の雄、東京医科歯科大学は前述のとおり4位だった。

 

日本では医科に比べ、歯科が低く見られているという点は否めない。とはいうものの、超高齢化社会のおける歯科医療の重要性は、誰もが認識しているはずだ。「オーラルフレイル」という口腔内の虚弱な状態では、寝たきりのリスクが増大する。介護の現場では口腔内のケアがもっとも重要であると言っても過言ではない。

 

また、高齢者になった時に、手術ほかさまざまな治療でネックになるのが、基礎疾患の重症化を来していることだ。脳血管疾患、心臓疾患をはじめとする病気の原因には歯周病菌が関連しているというのも今や常識になったとも言える。

 

現在のコロナ禍においても、ステイホーム中に口腔内の環境を悪くして、全身疾患の病状が悪化して人が増えているという話も聞こえてくる。そんなわけで、今後はますます歯科医療の重要性が増すことは明らかだ。

 

国立がん研究センター中央病院のある医師は、近年、70歳以上の手術が5割以上を占めていることを話してくれた。全国のがん診療連携拠点病院でも、おそらく同じことが起きているだろう。いや、地方の病院の方が手術を受ける高齢患者の増加は深刻なはずだ。

 

そんななかで、全身のあらゆるところに不具合を生じる高齢者にとって、歯科医療は各疾患を見る科の“ハブ”的な診療科としての役割がますます大切になるだろう。

 

現在、29校ある歯科大学・歯学部のうち、医科を併設する大学は、国立では全校。私立では4校ある。前述したとおり、東京歯科大学と慶應義塾大学の合併というのも大きなニュースだ。それ以外の大学も地域の医科大学や総合病院との連携を進めていることだろう。地方では医科大学同士の実習や研修などでの連携が模索されており、実際に実施しているところも増えている。

 

今後は、歯科大学・歯学部と医科の連携や新たなカリキュラム創出による交流などが進めば、超高齢化社会における医療はもっと充実していくのではないだろうか。

 

伊波達也

編集者・ライター

 

 

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