資格は「使われる」ものではなく「使う」もの
一方で、監査法人の同僚からは「監査の仕事に関係のない人脈を広げて何の意味があるの?」と不思議に思われることも多々ありました。
しかし私は会計士の知識と経験と肩書きを活かせば、もっと面白いことができてビジネスチャンスもあると感じていました。監査の仕事だけでは企業の経理担当者や監査担当者と会計の話をし、飲みに行くのは会社の同僚が中心となると、どうしても入ってくる情報は限定的になり、ビジネスの発想も広がらず、時代の流れがどうであれ目の前の仕事をやり続けるようになります。
これはどのような士業でも同じような状況かもしれませんが、こういった状況ではいまの業務が技術的失業のリスクにさらされても抜本的なアクションを起こすのは容易ではありません。
資格に使われない時代へ
市場は安定し、資格さえあれば仕事も利益も十分に手に入る。そんな古き良き時代においては資格ありきでビジネスを考えればよかったと思います。ただ、そういった時代はもう終わりつつあります。技術が加速度的に進歩して仕事の一部が自動化されかねないこれからは、資格ありきでビジネスを考えるのではなく、市場の動きを読んだビジネス展開をして、資格が使えるならば使うという発想のほうがむしろ安全だといえるでしょう。
「資格を使わないともったいない」という心理や、「〇〇士の仕事とはこういうものだ」という先入観でビジネスの発想の幅が狭くなり、利益率が低くてもその仕事に固執するのであれば、それは「資格に使われている」状況です。資格は「使われる」ものではなく「使う」ものです。その資格に価値があるのは、ビジネスにおいて有利に働くからです。
お客様や友人、ビジネスパートナーといった人とのつながりをベースに、積極的に人と会い、情報を集め、自由な発想でビジネスのアンテナを張る。そして、新たなビジネスを展開するうえで、アドバンテージとなるように士業としての専門知識と経験、肩書きなどを活かしていく──こういった資格の使い方ができれば、今後のAI時代でもさらなる伸び代が見えてきます。
藤田耕司
一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
FSGマネジメント株式会社代表取締役
FSG税理士事務所代表
公認会計士、税理士、心理カウンセラー
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