中山てつや氏は著書『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』のなかで、職場における諸問題について語っています。当記事では、中山氏のキャリアコンサルティングとしての実務経験をもとに、日本の企業における問題点を考察していきます。

「勝ち馬」に乗っても安心してはいけない理由は…

相性が良いことを、「馬が合う」とも言います。性格や気が合う、意気投合する、といった意味合いで使われますが、もともとは、乗馬に由来する言葉です。乗馬では、馬と乗り手の息が合わないとうまくいかないので、馬と乗り手の呼吸がぴったり合っている状態を、「馬が合う」と表現するようになったようです(参考:精選版日本国語大辞典)。

 

人間関係が良好で、前向きな印象を与える時によく使われる、便利な言葉でもあります。同じ「馬」を用いた表現で、「勝ち馬に乗る」という言葉もよく耳にします。有利なほうにつく、勝ったほうに味方して便乗する、力のある人の側について恩恵を受ける、などの意味で使われます(出所:デジタル大辞泉)。

 

こちらは、どちらかというと、あまり好ましくない時に用いるケースもあり、決して良い響きとまではいきませんが、「処世術」としては効率的で、手っ取り早く、効果てきめんな手段でもあります。

 

でも、実際に実行に移す時には、それなりの「覚悟」が必要となります。以前勤めていた会社で、役員と食事をしていた時の話です。お互いに転職してきた口ですので、前の会社の話題にも触れることになりました。

 

役員は、前の会社でもかなり上の職責まで上り詰めていましたが、所属していた派閥の長が派閥争いに負けた結果、一族郎党、皆外に出る羽目になったそうです。

 

この話題になると、役員は、それまでとは少し異なる、微妙に歪んだ、自嘲的な表情に変わりました。おそらく、まだそう遠くない、当時の生き残りをかけた生々しい社内抗争が、脳裏をよぎったのではないでしょうか。

組織に身を置く人は、常日頃の「自己防衛」が重要

馬が合えば相性良く、「勝ち馬(とおぼしきもの)」に乗ることができます。むしろ、乗せてもらっているという表現のほうが適切かもしれません。しばらくは気持ち良い、爽快な乗馬を満喫することになりますが、勝ち馬が、ゴール目前で「失速」することもあります。

 

もちろん、めでたくゴールインすることもあるでしょう。でも、その馬が損得勘定に長
けた、とんでもない「暴れ馬」だったりすると、ゴールした瞬間に、振り落とされてしまいます。

 

誰の側にもつかない、という選択肢もありますので、どうするかは本人次第です。しかし、勝ち馬に乗ると決めた時は、危険を察知したら降りる、あるいは、危ない目に遭っても大怪我を負わないよう、「危機管理」を怠らないようにしたほうが良いでしょう。

 

組織に身を置く者として、ある意味、常日頃の「自己防衛策」でもあります。

 

 

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中山てつや

1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。日系製造メーカー及び外資系IT企業を経て、主にグローバル人材を対象としたキャリアコンサルティングの仕事に携わる。

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    本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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