シリコンバレーが「ベンチャー企業の聖地」に君臨し続ける理由

1000のうち3つしか成功できないと言われているベンチャー企業。これは確率にして0.3%と、実現不可能にも思える数字です。ところがシリアルアントレプレナー(連続起業家)が存在することも事実。明暗を分けるのは「予備知識」です。ここでは医療機器開発に特化したベンチャーキャピタリストが、医療機器ベンチャーの「成功確率を上げる」ために必要な知識とノウハウを解説します。

医師の方はこちら
無料メルマガ登録はこちら

「エコシステム」知らずしてベンチャー業界は語れない

ベンチャー企業とベンチャーキャピタルの話をする前に、まずはベンチャーエコシステムについて少し触れておきたい。エコシステム(=生態系)という言葉はベンチャー業界では、一般的になりつつあるが、これを理解せずに、ベンチャー企業とベンチャーキャピタルを把握することはできない。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

エコシステムとは、アイデアを源泉とし、開発から製品化、上市、そして新規株式公開(IPO)もしくは買収(M&A)というエグジットまで、さらにはエグジット達成後の人材がまた起業していくというイノベーションの大きな流れのことだ。ここでは医療機器分野を例にベンチャーエコシステムについて解説する。

 

図表1のように、まず製品のアイデアを検討するアイデアステージがあり、続いて事業化デザインステージ、開発ステージ、臨床試験ステージ、薬事承認ステージ、製造販売ステージと進んでいく。

 

[図表1]医療機器の開発ステージ

 

本稿では、起業前のアーリーステージにあたるアイデアステージと事業化デザインステージにフォーカスするが、大前提として全体的なエコシステムの理解は欠かせない。それぞれのステージをクリアするたびに、順調であれば概ね3、4回ほどの資金調達を行い、最終的にエグジットを迎える。

ベンチャー企業が開発に成功した「あと」こそが重要

エグジットにはIPOとM&Aがあるが、米国の医療機器ベンチャー企業の多くはM&Aをゴールとしているため、これを基準に説明したい。以降は著書『医療機器開発とベンチャーキャピタル』からの抜粋である。

 

ベンチャー企業が成功するまでのステップについては、よく議論されるところだが本当に重要なのはベンチャー企業が開発に成功したあとだ。

 

ベンチャー企業は開発に成功するとIPOであれ、M&Aであれ、大企業になる。IPOなら自ら独立し拡大していき、M&Aなら大企業の一部となる。しかしながらベンチャー企業で働いている人材の多くは、大企業で働くことを望んでいない。

 

ベンチャー企業のほとんどの従業員は、自由な雰囲気、スピード感、ダイナミズム、そういったベンチャー独自の環境をもっとも居心地が良いと感じ、大企業の官僚的な組織に馴染めるとは限らない。もちろん成功した際に得られる多額の利益も魅力の一つではあるが、経済的利益が全てではない。そして、買収によるストックオプションでリターンを手にすると、多くの従業員は大企業の一部になったそのベンチャー企業を離れていく。

 

その後の人材がどのように流れるかを示したのが図表2だ。

 

[図表2]アメリカにおける医療機器のエコシステム

 

ベンチャー企業で働いている者は、「次はこんな製品を作ってみよう」と常になにか新しい製品を開発したいと考えている。従って、別のベンチャー企業で働くか、自らベンチャー企業を起業するには絶好のタイミングとなる。成功を経験している者が起業すれば、成功確率は高くなり、ベンチャーキャピタルからの投資が受けやすく資金調達が容易だ。そして、多くのベンチャー企業経験者が起業する。

 

また、成功後の人材には、開発者、技術者、安全管理や薬事の担当者等、様々なスキルと経験をもつ者がいる。成功経験のある人材が加わることにより、そのベンチャー企業の開発が加速する。そして、一つのベンチャー企業が成功すると、数十人単位で成功経験者が生まれることになる。年間、数十社のベンチャー企業が成功しており、それを過去30年以上も繰り返しているシリコンバレーでは、膨大な数の成功経験者が存在している。

「人材の循環」こそシリコンバレーの強さの源泉

こういった人材の厚みこそがシリコンバレーの強さの源泉であり、他の場所でシリコンバレーのような町を作ろうとしても簡単に真似できない理由なのだ。実験施設やインキュベーションセンター等、インフラは資金を掛ければ作れるが人は簡単には作れない。エコシステムとは、結局は人の循環なのである。

 

創業者として成功した者の中には、再度、起業するのではなく、エンジェルとなって個人投資家になる者が多い。特に、リタイアが近い年齢になってくると、またゼロからフルタイムでベンチャー企業を起こすのは体力的に大変なので、若い世代の起業家に資金を提供しつつ、これまでの経験を伝授する者が増える。

 

医療機器で成功したほとんどの者は、自らを成功へと導いてくれた医療機器業界に感謝しており、それに対する恩返しの気持ちをもっている。手にした資産を再び、医療機器業界に還元するのだ。エンジェルの場合、扱う資金規模がそれほど多くないので中には、ベンチャーキャピタリストとして投資側に回る者もいる。成功者なら投資先のベンチャー企業の経営でもダイレクトに経験を活かせるし、発言に説得力が増す。

 

繰り返しになるが、一度どっぷりとベンチャーの世界に浸かった人材の多くは、またベンチャー企業に戻ってくる。例えば、ストックオプションによって、数十億円を超えるような多額の資産を得た者であっても、たいていはまたベンチャー企業との関わりをもつ。成功後、リゾート地に家を買って、しばらくはゆっくりする者も多いが半年もすればその生活に飽きて戻ってくる。

 

革新的な医療機器を開発し、多くの患者を救い、富も名声も得られる。優秀な仲間と一緒に、誰もが考えつかない医療機器を開発する。ベンチャー企業での仕事は、一種の中毒性というか、その達成感を味わうと簡単には忘れられないのだ。それは起業した者だけでなく、一従業員として働いている者にとっても同じだ。最初が小さい成功であれば、次は大成功を狙う。そして多くのチャレンジャーが生まれ、医療機器のエコシステムを支えている。

 

ベンチャーキャピタルはベンチャー企業への資金の供給者として、エコシステムに欠かせず、ベンチャーキャピタルが存在できなければ、ベンチャー企業も存在できない。つまり、ベンチャーキャピタル自体が永続的に存続し、ベンチャー企業の血液であるリスクマネーを供給し続けなければならないのだ。

 

 

大下 創

MedVenture Partners株式会社 代表取締役社長

 

池野 文昭

MedVenture Partners株式会社 取締役チーフメディカルオフィサー

医師

 

 

【5月開催のセミナー】

 

【5/15開催】入居率99%を本気で実現する「堅実アパート経営」セミナー

 

【5/15開催】国内最強の別荘地「軽井沢」のすべてを学ぶ2021

 

【5/15開催】利回り20%売却益2千万円獲得!中古1棟アパート投資

 

【5/16開催】<家族信託×都心不動産投資>で実現する最新相続対策

 

【5/21開催】元国税調査官の税理士が教える最新相続対策

 

【5/23開催】土地活用賃貸経営で「持ち余し物件」収益化計画

 

【5/25開催】相続トラブルに備える「不動産・生前整理」のススメ

 

【5/29開催】国も認めた「レスキューホテル」社会貢献で利回り8~9%

 

※ 【5/30開催】社会貢献×安定収益「児童発達支援事業」の魅力

 

少人数制勉強会】30代・40代から始める不動産を活用した資産形成勉強会

 

医師限定】資産10億円を実現する「医師のための」投資コンサルティング

 

【40代会社員オススメ】新築ワンルームマンション投資相談会

MedVenture Partners株式会社 代表取締役社長

1969年生まれ。1997年から20数年の医療機器業界(事業会社・ベンチャーキャピタル)での経験を有する。

投資先の成功をきっかけに、2005年、シリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)で現地採用され、米国医療機器ベンチャー企業への投資を約5年間担当。
海外投資での成功率はこれまで通算8割を上回り、複数の投資先が時価総額1000億円超を達成している。

投資先が開発した製品は、世界中で多くの患者を救っており、代表的なものに治療法のない巨大脳動脈瘤の治療を可能にしたPipeline Stent等がある。

2013年、池野とともに、国内初の医療機器専門のVCであるMedVenture Partners株式会社を創業。1号ファンド(60億円)に続き、2019年に2号ファンド(99億円)を設立し、国内でも成功事例を生みだし、多くの投資先で社外取締役を務めている。

著者紹介

MedVenture Partners株式会社 取締役チーフメディカルオフィサー 医師

浜松市出身。1967年生まれ。自治医科大学卒業後、9年間、僻地医療を含む地域医療に携わり、日本の医療現場の課題、超高齢化地域での医療を体感する。2001年渡米。スタンフォード大学循環器科で研究を開始し、以後、多くの米国医療機器ベンチャー企業の製品開発に創業当時から携わる。

また、医療機器大手も含む、同分野での豊富なアドバイザー経験を有し、日米の医療事情に精通。研究と平行し、2014年からスタンフォード大学バイオデザイン講座で、医療機器分野・起業家養成プログラムの講師として教鞭をとっており、ジャパンバイオデザインの設立にも深く関与。日本にもシリコンバレー型の医療機器エコシステムを確立すべく、精力的に活動している。

著者紹介

連載医療機器開発とベンチャーキャピタル~起業成功の必須予備知識

※本連載は、大下創氏、池野文昭氏による共著『医療機器開発とベンチャーキャピタル 実践編』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医療機器開発とベンチャーキャピタル 実践編

医療機器開発とベンチャーキャピタル 実践編

大下 創
池野 文昭

幻冬舎メディアコンサルティング

起業を目指す「医師」「研究者」「医療機器開発者」必読! 医療機器ベンチャーの“成功確率を上げる”ために必要な知識とノウハウとは? 筆者は医療機器開発に特化したベンチャーキャピタリストとして、20年以上、数多くの…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧