商品設計と販売力だけじゃない…活況カンボジア不動産の裏事情

宗吉敏彦はリーマンショックに巻き込まれ650億円の負債を抱えて倒産。いったん経済の表舞台から姿を消した。リーマンショックで地獄に堕ちた男はアジアで再起のチャンスをいかに掴んだのか。宗吉とともに躍進するアジア不動産市場の潜在力と今後の可能性を探る。本連載は前野雅弥、富山篤著『アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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販売支援をするファイナンシャルコンサルタント

現地の「珍客」を味方に

 

クリードが759戸もの「ボレイ・マハ・センソック・プロジェクト」で成功できたのは、マーケティングの勝利といえるかもしれない。中間層を狙い、そこに照準を定めた商品設計が奏功したのだ。そして、もう一つ見逃せないのは販売力だ。マハのプロジェクトではこんな「珍客」をうまく取り込み、販売を後押しさせた。

 

その珍客とはある地元のファイナンシャルコンサルタント。セミナーで顧客を集めては上手なファイナンシャルプランの組み立て方をアドバイスしたり、「これはいい」と見定めた投資機会を紹介したりするビジネスを本業としていた。このコンサルタントがマハ・プロジェクトを取り上げ「このプロジェクトに投資すれば儲かる」と紹介してくれたのだ。

 

確かにマハは優良な投資案件だった。クリードが土地を取得した2015年3月期時点で開発地11万4000平方メートルの価格は約10億円。それが今では20億円と取得時の2倍にまで跳ね上がった。経済成長7%の国では時間が味方する典型的な見本。売れ行きも好調で、当初1戸5万ドル(約550万円)だった販売価格は、最終的に6万ドル(約660万円)にまで上方修正することができた。

 

あるコンサルタントは自ら戸建て100戸を仕入れて、クリードに転売してくれたという。(※写真はイメージです/PIXTA)
あるコンサルタントは自ら戸建て100戸を仕入れて、クリードに転売してくれたという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

それだけではない。もう一つ、このコンサルタントはある手法でクリードの販売を支えてくれた。人に勧めるだけでなく、自ら戸建て100戸を仕入れてくれたのだ。日本ではあり得ないシステムだが、カンボジアではしばしばこうしたことがある。コンサルタントが1戸あたり500ドル(約5万5000円)の預託金を支払って、物件100戸を自ら仕入れ、それを第三者に転売してくれたのだった。

 

つまりクリードに代わり、このコンサルタントが自分のルートで物件を売ってくれたわけだ。「これはありがたかった」と宗吉も言う。

 

いったいどういうことなのか。説明しよう。実はこのコンサルタント、単なる親切心でやってくれたのではない。コンサルタント自らに「うまみ」があるのだ。

 

つまり物件を1戸売る度に、販売価格の5%の手数料がこのコンサルタントに入る。販売価格が1戸5万ドルなら2500ドル(約27万5000円)。100戸売り切ると2750万円が入る。このお金をコンサルタントは稼ごうとしたのだ。

 

もちろん100戸仕入れておいて「しばらく頑張ってみましたが売れませんでした」ではすまされない。ペナルティーがある。3カ月で売れなければ、最初に物件を仕入れた段階で支払った預託金が没収されてしまう。「売れる」物件にしか手を出せないようになっている。マハ・プロジェクトではコンサルタントは1戸あたり500ドル(約5万5000円)の預託金を100戸分支払ったので、最初に550万円支払った。

 

だから仮に、このコンサルタントが3カ月かけて物件100戸を売ろうとして売れなかったら、550万円は全部、没収されてしまうルールなのだ。極めてハイリスク。結果はどうだったのか。

 

100戸のうち80戸売れた。差し引き「大儲け」だった。80戸売れたのだから、コンサルタントの懐に入った80戸分の販売手数料は20万ドル(約2200万円)。100戸のうち20戸は売れ残ったため最初に支払った20戸分の預託金の1万ドル(約110万円)は没収されてしまう。80戸売って販売手数料20万ドル(約2200万円)が懐に入るため、没収された1万ドル(約110万円)を差し引いても2000万円あまりをこのコンサルタントは手にすることができた計算だ。

 

コンセプトはいい。商品も手抜きはない。しかしそれだけでは売れない。大切なのは売る仕掛け。クリードはそれをカンボジアでやってみせたのだった。

クリードグループ 代表

1965年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、伊藤忠商事に入社。不動産開発やコーポレートファイナンスに従事したのち、1996年クリードを設立。
当時の国内不動産業界で一般的でなかったDCFの概念を取り入れた不動産投資・評価にいち早く着目し事業をスタート、私募不動産ファンド・REIT運用等を手がける。
2012年からは、マレーシアを皮切りに本格的に東南アジアでの不動産投資に着手。現在、シンガポールに拠点を移し、マレーシア、カンボジア、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナムで事業を展開している。

著者紹介

日本経済新聞 記者

東京経済部で大蔵省、自治省などを担当後、金融、エレクトロニクス、石油、ビール業界等を取材。現在は医療、不動産関連の記事を執筆。著書に『田中角栄のふろしき』(日本経済新聞出版社)がある。

著者紹介

日本経済新聞 記者

2014年よりハノイ支局長としてベトナム全般を取材。現在は日経産業新聞の海外面デスクを務める一方、外国人労働者問題、ASEANなどを取材。著書に『現地駐在記者が教える 超実践的ベトナム語入門』(アスク出版)がある。

著者紹介

連載リーマンの敗者、沸騰するアジアの不動産市場で奇跡の復活

アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」

アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」

宗吉 敏彦 前野 雅弥 前野 雅弥

プレジデント社

クリードの奇跡の主人公、宗吉敏彦は、2009年1月9日、リーマン・ショックに巻き込まれ650億円の負債を抱えて倒産。いったん経済の表舞台から姿を消したものの再びアジアで復活したかと思ったら、世界的な新型コロナウイルスの…

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