近年では相続税の課税はますます重く、また、これまで許容されていた対策にも規制がかかるなど、非常に厳しいものとなっています。大切な資産を減らすことなく無事に相続を乗り切るには、どのような手段があるのでしょうか。「相続実務士」のもとに寄せられた相談実例をもとにプロフェッショナルが解説します。※本記事は株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

子のない夫婦…財産を「きょうだいに渡したくない」

●定年まで懸命に仕事…自宅あり、ローンなし、多額の預貯金あり

 

数年前、筆者のもとに鈴木さんとおっしゃる60代後半の男性が相談に訪れました。鈴木さんは30代で結婚、共働きで共有名義のローンで家を購入して、仲良く暮らしてきました。勤めていた会社も65歳で定年となり、いまは老後の楽しみ半分に、関連企業でアルバイトをしています。同年代の妻も看護関係の仕事をリタイヤし、趣味のサークルに通う日々を送っています。家のローンは返し終わり、悠々自適の生活となりました。

 

●「使わない生活」で現金が貯まった

 

2人とも贅沢をするタイプではないため、大きな買い物をしたり、高価な食事を楽しむことも多くなく、ましてギャンブルなどに使うこともありません。いまでは夫婦合わせると1億円以上の預金があり、それ以外にローンのない自宅があるという資産状況です。

 

 

なんの不安もないというところですが、鈴木さん夫婦は子どもに恵まれませんでした。子どもがいない夫婦の場合、相続人は配偶者と亡くなった人のきょうだいになります。

 

鈴木さんには兄と姉が、妻には妹と弟がいます。つまり、それぞれの相続のときには互いのきょうだいも相続人になるのです。とくにきょうだいの仲が悪いわけではありませんが、親の財産をもらったわけでもなく、夫婦でずっと定年まで働いて残した財産ですので、互いの配偶者に全部渡したいと考えました。

 

●「それぞれの財産は配偶者に」との遺言書は作成済み

 

自分の全財産を配偶者に相続させるためには、遺言書で指定しておく必要があります。鈴木さん夫婦は70歳になる直前に、それぞれの配偶者に全財産を相続させるという遺言書を作成しました。

 

この遺言書があれば、互いのきょうだいに財産を分ける必要がありません。きょうだいには遺留分の請求権がないため、トラブルになることもないといえます。

 

●残されるほうの不安…最後まで甥姪には頼りたくない

 

それから数年経ち、少し相続が身近な年代になったと、鈴木さんが再び相談に来られました。どちらが先に亡くなるかわかりませんが、残ったどちらかが認知症になるかもしれない、また、残った方が亡くなったあとはどうすればいいのか不安になってきた、といいます。

 

きょうだいに財産を分ける予定はないため、きょうだいや甥姪には頼りたくなく、財産は老人ホームに入るなどの費用に使うほか、残りは寄付したいと考えています。

 

●信託銀行は費用が…

 

信託銀行にも行ってみたものの、やたらと費用が高いばかりなので、筆者のところに再訪してみたとのことでした。

 

鈴木さんご夫婦に必要なのは、認知症になったときに後見や、どちらかがひとりになったときの見回りサービス、遺言執行や死後の整理等でしょう。

 

現実に相続になるのは10年、15年先になると思われますが、まずはその間、不安なく生活できることが重要です。

 

 相続実務士のアドバイス 

 

子どもに恵まれなかったご夫婦はたくさんいらっしゃいます。多くの場合、きょうだいや甥姪に託されるのですが、最後まで自分たちで手続きしていきたいという場合は、専門家の手を借りることも選択肢となります。
 

【できる対策】

夫婦それぞれが遺言書を作っておく
認知症になったときや、死後のことも話し合って決めておく
実現できる契約もしておく

【注意ポイント】

子どもがいない場合、配偶者に全部を渡したい場合は遺言書が必須
きょうだいには遺留分がないので遺言書で手続きできる
きょうだいに頼らない場合は、死後の後始末を依頼する人を決めておかなければ意思が実現できない

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

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