ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

家族と一緒の食材で調理し、時間をかけない

高齢者が食べやすいものはなに?

 

基本的には柔らかいものが中心になります。肉類は冷えると硬くなり噛みきれなくなるので、再度温めて小さくサイズダウンしてください。ひき肉を利用したハンバーグや焼売、ロールキャベツなどもお薦めです。魚は、骨抜きの状態で販売されているものがあります。多少割高ですが高齢者には安心です。野菜は繊維質が多いので食べづらいこともあります。

 

食べやすいメニューを考えることも大切です。同じサツマイモなら蒸らしたものよりスイートポテトの方が食べやすいというイメージです。調理食材は、刻みすぎると口の中に残り不衛生になりやすいので、野菜はみじん切りよりも薄い輪切りが火も通りやすく適しています。具沢山の味噌汁は根菜や葉物などを軟らかく煮て、入れ歯がなくても歯茎でつぶせるくらいがちょうど良いくらいです。

 

卵豆腐、カレー、ハヤシライス、あんかけも食べやすい献立です。親のために手間をかけるのではなく、家族と一緒の食材で調理を工夫しながら、余計な時間をかけないようにしています。

 

市販品で栄養摂取も気にかける

 

私の母は平日の昼食は小規模多機能で、バランスのとれた食事をとっています。一食でも人間らしい食事ができているのは手抜きの逃げ道になります。高齢になると栄養バランスや摂取量を確保することは難しくなります。わが家では母の朝食に豆乳を必ず添えています。大豆そのものは消化の良い食品ではないのですが、豆乳になると消化吸収率は92〜98%にもなります。特別養護老人ホームなどではハーフ食というものがあります。

 

食事の量が半分になるのではなく補助栄養食で補うことで1日のカロリーは変えないというものです。家庭でも真似してみてはどうでしょうか。お手軽なのが薬局で手に入る明治のメイグット、メイバランスなどの市販商品です。これらを上手にとり入れてみてください。それでもハードルが高いのであれば、スーパーで手軽に手に入るカロリーメイトや1日分の野菜の栄養素を含んだ高カロリーなゼリー状飲料もお薦めです。動かない高齢者は1日、1200キロカロリーでも十分です。

 

栄養が足りないと感じた日や、都合で食事がとれなかったとき、通院時、診察が長引いて水分がとれないときも、ゼリー状飲料なら食器もいらずそのまま口から吸いこめるので便利です。入院すると、急激に痩せることもありますが、体重1キロ増やすには7000〜8000キロカロリーが必要です。これを食の細い高齢者がとるのは容易ではありません。食べる時間と量はコンパクトにしつつ、カロリーは減らしたくないときも高カロリーゼリーはうってつけです。

 

母が誤嚥性肺炎で入院をしていたとき、お粥も食べられない時期がありました。病院ではご飯の代わりにネスレのアイソカルを使用していました。絶食期間後も、まずはこのアイソカルから始まります。病院でも選ばれている優れものなので、在宅復帰後も通販で購入して、食が進まないときに利用しました。

 

水分は液体にこだわらない

 

母の水分量は1日1200㏄を目安にしています。昼間、施設で700㏄は飲んでいるようなので、家では500㏄がノルマです。水分は食べ物にも含まれていますし、一概に液体にこだわらなくても大丈夫です。基本的なことですが、㏄と㎖とgは同じということを利用します。実はゼリーは介護現場では水分補給としてカウントされているのです。

 

ということは、100gのゼリーは100㏄の水と同じなのです。水分はとても大切で、とらないと脳梗塞の原因にもなります。むせやすく、液体が苦手な場合は、とろみ剤の利用だけでなく、ゼリーで代用もできますので、とくには楽をして変化もつけてみてください。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧