2025年には、65歳以上の人口が国民全体の30%になることが見込まれており、後期高齢者の増加が、今後の日本の福祉、医療における最大の課題になっています。国から「在宅医療」が推進されるなか、高齢者本人とその家族が安心して「最期」を迎えるためには、どうすればよいのでしょうか。今回は、家族で「終活」に取り組むべき理由を解説します。

迷ったときは、医療関係者や友人へ相談を

家族だけで今後の話をするのが難しいときは、かかりつけ医がいる人や介護保険サービスを受けている人ならば医師や看護師、病院のソーシャルワーカー、ケアマネジャー、介護スタッフといった医療・介護関係者に相談をしてください。

 

終末期医療の詳しい内容などは、一般のご家族だけで話をするのは難しいことも多いと思いますので、話しやすいスタッフをつかまえて「教えてほしい」「相談したい」と伝えていただければと思います。

 

親きょうだいがすでに亡くなっているとか、事情があって家族と長らく疎遠にしているなど、大事な話ができる家族がいない人は、親しい友人や地域の民生委員などに自分の希望を伝えておけばいいのです。

 

新しい「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」でも、ACP(人生会議)を話し合う人は法的な家族・親族だけに限らず、より広い範囲の人を含むことが示されています。

 

なお、将来の希望について、自分一人でエンディングノートや記録を作ったという人は、必ずその事実と保管場所を周りの人に知らせておくようにしてください。

 

現在の日本では人生会議の記録を作ったとしても、それが法的に効力をもつわけではありません。これは著者が理事を務める日本尊厳死協会で作成している「リビング・ウイル」(回復の見込みがなくなったときの意向を示した宣言書)なども同様です。ですから、紙に希望を書いて残しておけばそれが必ず叶うという保証は残念ながらありません。

 

しかも、記録があることや本人の希望について家族や周りの人が知らなければ、いざというときの医療に反映されないことは確実です。

 

紙の記録があってもなくても、本人は伝えたい希望があればそれを周囲の人に伝え、家族や周りの人はそれに真摯に耳を傾ける。これを人生のステージや体調の変化などに合わせて何度も繰り返していくことが、ACP=人生会議の本質だと思います。

「ACPの記録」は一度作って終わりというものではない

ACPに法的な意味合いをもたせるか否かについては今も議論されていますが、著者はACPは私的な約束事でいいのではと考えています。ACPの記録は一度作って終わりというものではなく、時と場合によって刻々と変わる可能性のあるものだからです。これに法的な効力をもたせたり、記録作成を義務化したりするようなことになれば、それはそれでまた種々の問題が生じてきます。

 

ACPは、最期までできるだけ本人の希望を尊重するとともに、残された親族が後悔しないための話し合いです。厚生労働省のガイドラインにもあるように、あくまでも自発的なプロセスとして本人や家族が「そろそろ話しておきたいね」というときに、率直に話ができることが大切なのではないかと思います。

 

それぞれの家族が自分たちのスタイル、自分たちのタイミングで「縁起でもない話」を普通にできるようになれば、私たち日本人の人生の最終盤がもっと豊かなものになるでしょう。

 

 

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杉浦 敏之

幻冬舎メディアコンサルティング

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