「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母親が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。日本の高齢化は進み、高齢者と後期高齢者という家族構成が珍しくなくなってきた。老いと死、そして生きることを考えていきます。本連載は松原惇子著は『母の老い方観察記録』(海竜社)を抜粋し、再編集したものです。

高所得、高学歴、高職種でプライドが高い人は…

プライドが高い人は寂しい

 

引きこもりのシニアが世田谷に多い訳を番組はこう分析していた。

 

世田谷は高所得、高学歴、高職種、いわゆる3高の人が多い町。そのプライドの高さが、寂しい老後に繋がっているのではないかと。その証拠に、世田谷の老人クラブ加入率が23区中22 位だという。

 

つまり、自分のプライドの高さが、地域にいるレベルの違う人とのつきあいを許さないのだ。「あんたは何様? 役員だったことがそんなにえらいの? バカじゃないの」と陰の声。その結果、そんな人と付き合うぐらいだったら、ひとりで家にこもっていたほうがましという結論に至らしめているようだ。

 

プライドが高い人が陥りやすい老後の引きこもり。えらそうに言っているわたしも、注意しなければならないだろう。

 

シニアの引きこもりというと、どちらかというと経済的に貧しい人たちと決めつけていた自分が、勉強不足だったことに気づき、はっとさせられた。

 

もしかして、日本人のスタンダードな老後は、ひきこもりなのかもしれない。マンションという箱の中で、隣人との付き合いもなく、また、ポストに自分の名前を出すことさえ拒む人が多くなっている。これでいいのか。生き方を根本から考え直さないといけないときが来ているような気がする。

 

ひとりでは生きにくい社会

 

2016年1月20日に報道された「公益財団法人日本ライフ協会の預託金流用」の記事に驚いた人も多いはずだ。身寄りのいないひとりの人や、人に頼りたくない人にとり、見守りや保証人や死後事務を行ってくれる団体は救いの神様である。

 

NPO法人SSS(スリーエス)の会員の中にも、日本ライフ協会、りすシステム、絆の会、などの団体と契約している人はたくさんいる。契約した方に話を聞くと、みんながみんな、口を揃えて「これで安心した」という。これは本音だろう。


 
15年以上前の話だが、取材で初めてNPO・りすシステムのサービスを知ったときは、これは人助けだと驚嘆したものだ。SSSでは、せいぜいお墓を作ることしかできないが、その前段階の不安を取り除いてくれるサービスを提供するというのだからすごいと思った。

 

「家族の代わりにやります」のキャッチフレーズは、頼る家族のいないおひとりさまの救世主だ。多くのおひとりさまにとり、身内に頭を下げて、自分のことをお願いすることほど、やりたくないことはない。だが今の日本社会では家族がいなければ、誰かにお願いするしかない。

 

感動したわたしたちは、SSSとりすシステムと提携することも考えた。

 

しかし、志は素晴らしくても、一民間団体が永遠に組織と資金を継続していくことができるのか。経済情勢が変わり、預り金が紙くずになったらどうするのか、などの疑問をもったので、お金が絡む他団体とは関わらないことを決めたのだった。

 

会員の方から「日本ライフ協会に入っているが、どうしたらいいのか。他に信頼できるところはないのか」という質問があった。冷たいようだが、「SSSは関与してないので、ご自分で見つけてください」と答えた。

 

いつか、こういう事件が起きるだろうと思っていたが、国が認めた公益財団法人だったこと、8人の理事全員が発覚の翌日に辞任したことが、あまりにも無責任で驚かされた。

 

母の老い方観察記録

母の老い方観察記録

松原 惇子

海竜社

『女が家を買うとき』(文藝春秋)で世に出た著者が、「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。 おしゃれ大好き、お出かけ大好…

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