先週の米ドル/円は、FOMC後の米金利急騰などの影響で、109円近辺での高止まりが続きました。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は「最近の米ドル/円は滅多にないほど『米金利次第』」だと述べています。今回は吉田氏が、米ドル/円の行方を左右する、米金利の今後の展開を予想します。

 

FOMC終了後に行われたパウエルFRB議長の記者会見のなかで、3月末終了予定の「補完的レバレッジ比率(SLR)」条件緩和について、記者団とのやり取りがありました。このSLR条件緩和とは、昨年4月、コロナ・ショックを受けて米金融監督当局が金融機関保有の米国債などをSLRの算出から除外することを時限的に認めたものでした。

 

これにより、金融機関は資本を積み増す必要に迫られることなく、米国債のポートフォリオを増やすことが可能になったのです。ただ、逆にいえば、時限的措置が終わると、金融機関はバランスシートの債券保有を減らす必要に迫られるかもしれません。つまり債券売りが急拡大する可能性があります。

 

最近にかけての米国債急落(利回り急騰)は、そんな時限的措置終了に伴う債券売り急拡大といった需給悪化への警戒も大きく、これが米金利上昇(債券価格下落)が急加速した一因、というより主因だといえるでしょう。現にFOMCの2日後、19日にFRBがこの時限的措置の3月末終了を発表すると、米金利の急騰が再燃、10年債利回りは改めてこの間の高値である1.75%に迫る動きとなりました。

 

では、SLRの条件緩和終了による米国債売り拡大といった需給悪化懸念も現実になったことで、米国債価格下落、利回り上昇はさらに広がるところとなるでしょうか。それは米ドル/円の当面の行方も決める可能性があります。

米金利の「上がり過ぎ」は続くのか、それとも…

それにしても、上述のように、米10年債利回りの90日MAからのかい離率はプラス50%程度といった具合に、空前の拡大となっています。これは、米10年債利回りが短期的に空前の「上がり過ぎ」となっている可能性があることを示しています。そういったなかでの米金利上昇は、さらに続くのでしょうか。

 

これまで、米金利、10年債利回りの90日MAで見た「上がり過ぎ」または「下がり過ぎ」の一巡は、FOMCが終了してから間もなく一巡することが少なくありませんでした(図表4参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表4]米10年債利回りの90日MAからのかい離率(2010年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

これを参考にすると、SLRの条件緩和終了による米国債売り拡大といった需給悪化懸念は、あくまでここまでの金利上昇をもたらしたものであり、それが現実化することになったからといってさらに金利上昇が広がるといったことにはなりません。マーケットの格言の一つである「バイ・ザ・ルーマー、セル・ザ・ファクト(噂で買って、事実を確認して売る)」といった展開になる可能性も注目したいと思います。

 

今回述べてきたように、最近の米ドル/円は、いつも以上に日米金利差、とくに米金利次第となっているので、その関係に大きな変化がなければ、米ドル/円の行方は米金利「上がり過ぎ」が続くかどうかが焦点となるでしょう。
 


 

吉田恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

 

 

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