4月1日「高年齢者雇用安定法」の改正が施行され、70歳まで就業機会確保が努力義務となります。法律改正によって、わたしたちの働き方はどのように変わっていくのでしょうか。

本当に「70歳まで働きたい」のか?

内閣府『老後の生活設計と公的年金に関する世論調査』では、定年に対する人々の考えが見えてきます。

 

Q.何歳まで仕事をしたいか?

「30歳以下」2.6%、
「31歳~40歳」1.3%、
「41歳~50歳」3.0%、
「51歳~60歳」18.8%
「61歳~65歳」30.7%
「66歳~70歳」21.5%
「71歳~75歳」9.2%
「76歳~80歳」4.3%
「81歳~85歳」1.3%
「86歳~90歳」0.4%
「91歳以上」0.9%
「これまで働いておらず、これから働く予定もない」3.5%

Q.その年齢で退職したい理由は?

「趣味やボランティアなど仕事以外のことに時間を使いたいから」17.0%
「定年退職の年齢だから」29.2%
「体力的・精神的に難しいから」29.0%
「年金を受け取れる年齢になるから」9.8%
「資産が十分にあるから」0.5%
「配偶者や子どもなどの収入があるから」4.1%

Q.その年齢まで働きたい理由は?

「仕事をするのが好きだから」16.9%
「定年退職の年齢だから」7.0%
「経済的にゆとりある生活を送りたいから」28.9%
「働き続けないと生活費が足りないと思うから」24.9%
「社会との繋がりが欲しいから」13.4%

 

多くの人が、定年といわれる60~65歳で仕事を辞めたいと思っている一方で、早期退職したい人は25.7%、定年後も働きたいという人は36.7%。仕事に対して前向きな姿勢の人も多くいます。

 

一方で仕事をしたい理由・やめたい理由を見ると、やりがいを口にする一方で、経済的理由をあげる人が多くいます。逆に、金銭的な不安が解消されていれば、仕事はしたくない、が多くの人の本音といえるでしょう。

 

現在の老齢年金の受給開始は65歳から(男性は昭和36年4月2日生まれ以降、女性は昭和41年4月2日生まれ以降の場合)。希望すれば60~65歳未満に繰上受給、65~70歳までの繰下受給を選択できます。

 

高年齢者雇用安定法の改正により、70歳まで働けるのであれば、年金受給の繰下げを検討することになるでしょう。ちなみに70歳からの年金受給となると、年金額は42%増となります。

 

働き方の選択肢が増えることは嬉しいことですが、70歳までやりがいをもって働けるかは疑問です。厚生労働省『賃金構造基本統計調査』によると、男性、正社員の平均月給は年齢が上がるとともにあがっていき、「50~54歳」43万6300円でピークに。「55~59歳」でもほぼ横ばいの43万3600万円をキープしますが、「60~64歳」で34万4600円、「65~69歳」で29万5600円と下降の一途を辿ります(図表1)

 

出所:厚生労働省『令和元年賃金構造基本統計調査』より作成
[図表1]男性、正社員の賃金カーブ 出所:厚生労働省『令和元年賃金構造基本統計調査』より作成

 

この先、定年が70歳になったとして、会社員としての賃金のピーク年齢が上がるとは少々考えにくいでしょう。ピークを過ぎてなお、やりがいをもって働き続ける……つらいと感じる人も多いのではないでしょうか。

 

また今後、努力義務が義務となり、「70歳で定年」が当たり前になれば、公的年金の受給年齢がさらに上がり、仕事を辞めたくても辞められない、給料が上がらなくても勤め人でいなければならない……という時代になることも予想されます。

 

さらに日本において、健康寿命は男性が70.42歳、女性が73.62歳といわれています。定年年齢とともに健康寿命も延びていかないと、定年退職後、すぐに介護や医療にお世話になる、老後の楽しみなんて何もない、という辛い状況になりかねません。

 

定年70歳……そんな時代が、すぐ目の前に迫っています。

 

 

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