「人生100年時代」といわれています。22歳から65歳まで現役で働いていた時間よりも、定年後の時間のほうが長いのです。定年後の避けては通れない課題は「お金」「健康」「生きがい」。これが定年後の3大リスクです。この「3大リスク」をうまくクリアできれば、第二の人生をバラ色にすることがきます。本連載は長尾義弘・福岡武彦著『定年の教科書 お金 健康 生きがい』(河出書房新社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

認知症に潜む高額賠償の金融リスクに備えよ

子育てが終わって、大きな出費がなくなり、これから自分たちの老後資金の準備をする時期なのですが、介護離職をしてしまうと、それもままなりません。離職をしないで、親の介護をできるように工夫することが大事になってきます。

 

また、介護を担う配偶者も高齢者であるため、高齢者同士の老老介護や、認知症同士の認認介護が社会問題になっています。

 

介護の負担は、公的な介護サービスを使ったり、親族間の話し合いで、一人にかかる負担をできるだけ減らすように工夫をすることがとても大事になってきます。

 

認知症には、さまざまなリスクが潜んでいます。損害賠償のリスク、資産凍結のリスク、金融詐欺のリスクです。例をあげながら紹介します。

 

認知症患者の監督責任のリスク

 

たとえば、こんな事件がありました。2007年12月、認知症の患者がJR東海の鉄道線路内に立ち入り、列車にはねられ死亡しました。

 

このときJR東海は、遺族に対して損害賠償を求めたのです。一審では750万円の判決でしたが、最高裁では無罪という逆転判決が出ました。この裁判では遺族が「監督義務者」にあたらないとされたものの、状況によっては親族の誰かが「監督義務者」として責任を問われる可能性もあるのです。

 

なかなか難しい問題ですが、こうした損害賠償に備えるには、個人賠償責任保険が有効です。この事件を受けて、大手の損害保険会社は、個人賠償責任保険の適用範囲を法定監督義務者にまで広げる改定をおこなっています。

 

また、別居の父母まで補償の範囲を広げた個人賠償責任保険も登場しました。保険に加入した本人、または配偶者の父母が、遠く離れた田舎に暮らしていたとしても補償の対象になるのです。

 

個人賠償責任保険は、もちろん認知症以外でも役に立ちます。幅広い損害をフォローしているので、検討してみてはいかがでしょうか?

 

認知症の金融リスク1/認知症になったら、自分のお金が使えない!

 

「もし認知症になったとしても、老後資金は十分に持っているから大丈夫」などと、安心してはいられません。認知症と診断された場合、あなたが持っている金融資産は「凍結」されてしまう可能性があります。

 

金融機関としては、個人の金融口座、株式の売買、不動産の売買など、すべて本人の意思確認を必要とします。たとえ親族であっても、本人の意思確認が取れないと資産を動かすことができません。

 

たとえば、銀行の口座に1億円の老後資金を準備しておいたとします。子どもがその老後資金を使って、父親を快適な介護施設へ入居させてあげようと考えました。

 

ところが、その時点で父親が認知症を発症していると、本人の意思確認が取れません。すると、口座から現金を引き出せなくなり、せっかく準備していた老後資金が使えなくなってしまうのです。しかたがないからと自宅を売って資金をつくろうとしても、名義が父親であれば不動産の売買もかないません。

 

自分で貯めた自分のためのお金なのに、その当人が必要になったときに自由に使えない。なんとも残念な話が起きてしまうわけです。

 

 認知症の金融リスク2/認知能力が低下した高齢者は狙われる

 

よくニュースで報道されている「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」など、特殊詐欺のリスクも高まります。

 

警察庁の資料では、2019年の特殊詐欺の認知件数は1万6851件で、被害総額は315.8億円です。警戒心の薄い人はもとより、認知症の人もしばしば狙われています。

 

そのほか、認知能力が落ちてきた人への金融資産の管理が問題になってきています。

 

2019年に起きた「かんぽ生命の不適切営業」もそうです。かんぽ生命の問題を調査している特別調査委員会の報告書によれば、法令・社内ルールなどに違反する販売が1万2836件確認されたそうですが、そのうち70%が60歳以上の高齢者です。

 

認知能力が低下した高齢者はターゲットになりやすいのが現状です。

 

 

長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー
AFP
日本年金学会会員

 

福岡 武彦
1株式会社ライフエレメンツ代表取締役
税理士

 

 

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