ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

介護と家庭の両立は優先順位ではなく緊急度判断

介護と家庭を両立させるコツは緊急度判断

 

施設入居の場合、定期的な面会と緊急時の応答を意識すれば良いので、家庭との両立もさほど心配はいりません。在宅介護の場合、中でも子育てとの両立のコツは緊急度判断がポイントです。私は長女であり、2児の母でもあります。

 

平日はフルタイム勤務のほか、家事があります。10年以上の遠距離と在宅介護の間には、子どもの受験も数回経験しています。1日という生活サイクルでも人生のライフサイクルでも、今やるべきことは必ずあります。その緊急度を判断し、それ以外のことはある程度目をつぶるだけで良いのです。

 

1日という生活サイクルの中でのポイント

 

介護だけの生活ではないので、同時に何かをやらなければならないことがあります。そんなときは優先順位より、今、最も緊急な事態は何であるかを判断しましょう。

 

失禁を例にとると、緊急度高は弄便(便いじり)、緊急度中は便失禁、緊急度低は尿失禁です。結果的にオムツやパンツは替えるのですが、天ぷらを揚げている、出発時間が迫る中お弁当を作っているなど緊急なものが他にあるのなら、それを先に進めれば良いのです。弄便の緊急度が高いのは、親がその手を舐めてしまう、便を他の洋服や壁につけてしまうリスクがあるからです。

 

朝、デイサービスの迎えがきたとき親が朝食を食べていなくても、このときは家から送り出すことが緊急です。タイムアウトになったものや忘れてしまったものは、そもそもやらなくても良かったこと、ほとんど時間が解決するのです。

 

人生というライフサイクルの中でのポイント

 

一例として、わが子の受験をあげてみます。目指すべきゴールは楽をして最大の結果を残すことです。私が意識したのは子どもの性格に合った受験スタイルの提案、業務独占資格が取得可能な大学と学部の情報を集めサポートする、この2つです。ふたりの子どもは推薦を利用したので、過酷な受験戦争時期も外野から同級生を応援できました。冬の時期、インフルエンザなどの感染症にも必要以上にピリピリせず、仕事も介護もマイペースでできたのです。

 

長女  県立の進学校から指定校推薦でK大薬学部に現役合格
長男  私立の付属校から学校内推薦でT大建築学部に現役合格

 

介護をしている家庭は、おのずと時間が限られてきます。受験だけでなくマイホーム購入や転職などライフイベントを成功させるには、長期的視点と情報戦略が欠かせません。

 

家族に介護の協力を期待できるか

 

核家族だった家庭に親を呼び寄せる、親の家で同居をするなら、男女関係なく実子が100%介護を担う覚悟をしましょう。それくらいの覚悟がないと同居での介護は難しいと思います。あくまでも覚悟であって、そのくらいの気持ちを持ってくださいというものです。実子が不在のときは、まずお金を払って介護サービスを使うことを検討します。

 

私の場合、出張で遅くなることが先にわかっている場合は、その日は泊まりをお願いしています。どうしても家族にお願いしたいことがある場合は「〇をお願いしたい、本当に助かる、ありがとう」と具体的かつお礼の心も伝えた方が気持ち良く生活できます。男性が故郷にひとりで戻り、親の介護をするのは珍しくない光景です。どちらにしても同居してもらえるのは、ありがたいのです。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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渋澤 和世

プレジデント社

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