ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

介護家族をサポートするサービスを安価で利用

エピソード

 

勤務先の制度を知って、やりくりする私の勤務先の制度は幸いにも整っている方だと思いますが、これらを積極的に利用している人は私の見た限り少ないです。それなりの頻度で訃報が出ますが、子である立場の社員が介護休職をとっているわけではありません。すべての親が〝ぴんぴんころり〟というわけではないので、入院や介護が必要な方が大多数でしょう。

 

ですが、皆、工夫をして働き続けています。自分の生活を優先しているのが大多数なのです。大手だから、制度があるから働き続けられるというのは誤解で、職場での立場や、それを理由に休むことへの罪悪感、責任感、色々とある中で使わないという選択なのです。介護に専念するため会社の希望退職やセカンドキャリア支援を利用して退職する人はいますが、親と今、一緒にいることを優先したのであり、考えがぶれていません。

 

よく、中小だから、制度がないからと思われがちですが、実際は大企業でも制度があっても使わないのなら一緒なのです。私はといえば、特別なものは使ったことがありません。有給休暇のほかに、学校行事、ボランティア、通院などに使える休暇が別にあるので、その範囲でまかなっています。母の通院や子どもの行事、ボランティアで休むことももちろんありますが、他の従業員より目立って休んでいるとは思っていません。

 

介護離職

 

介護者本人が、介護離職ができない理由(ローン、学費など)があればそもそもできません。介護離職に踏みきれる人は、ある意味、ゆとりがある方なのかもしれません。離職できない人が辞めないためには、自分の生活リズム、介護できない時間、悩み、心配なことを明確にしてからケアマネージャーなどの専門家に相談をしてください。

 

今は介護家族をサポートするサービスが安価で利用できるのです。ひねくれた見方ですが、転職先が決まっている、起業するなど本当の理由が伝えにくい場合、介護を理由にすると辞めやすいかもしれない、とは思います。

 

介護休業

 

介護休業は育児休業とよく比較されますが、正直、育児休業の方が手厚いです。当然です。取得者の年齢が違いますから。育児は20〜30代、これからの人であり、少子化の日本にとっても子どもは産んでもらわなくては困るのです。

 

介護は40〜50代、生産性が下がる世代です。取得期間も育児は最長2年と手厚いのに対し、介護は93日(分割可)です。93日はサービス体制を整える、施設探しなど仕事と介護の両立を準備する期間としての位置づけですが、これが理由だとすると長すぎると思うのです。

 

しかも原則2週間前までに事業者に届け出る必要があります。親が入院中で急な退院もあります。2週間前に手続きをしていられないと思いませんか? そして、介護のお世話のための取得なら、短すぎます。介護休業をとるなら、看取りというのが私の考えです。2週間前に書類を出すと、なんだか気分的に死を待つようでイヤと思う方もいるでしょう。あとは人間の命が絶えるのは予測ができないというのも難しいところです。

 

 

 
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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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