なぜ、認知症なんかになるんだ――。物を失くす、使えなくなる、物忘れが増える……。刻々と変わりゆく妻の様⼦に⼾惑う⽇々について、棚橋正夫氏は書籍『認知症介護自宅ケア奮闘記 私の知恵と工夫』で記しています。本記事では、「認知症を発症したかもしれない」と感じるきっかけとなった、生活の変化について解説します。

「包丁がないの。探してるの」見つかった場所は…

2012年春の出来事だった。早朝、妻が台所で引き出しや扉を開けたり閉めたりしていた。2階から下りてきた私は、「何を探してるの?」と聞いた。

 

「包丁がないの。探してるの」と言う。包丁入れを確認すると確かになかった。昨夜は、玉葱を切っていた。

 

「昨日あったのにおかしいね。一緒に探そう」と協力した。二人で押し入れや戸棚、思い当たる場所を探したがどこにもなかった。

 

「おかしいな? どこに、行ったんだろう?」と互いに不思議に思った。まさかと思ったが、冷蔵庫の扉を順番に開けて冷凍庫を見た。そこに凍り付いた包丁が横たわっていた。

 

「こんなところにあったよ。お前入れたの?」と言うと、「私そんなところに入れた覚えはないわ。私じゃない」と強く否定した。

 

「じゃあ、誰が入れたん?」「お父さんが、入れたんと違う」と言う。

 

「お父さんは、包丁なんか使わないやろ、こんなところに入れるはずはないだろう」と語気を強めて言い返した。

 

「私は知りません。入れてません」の繰り返しで涙ぐんで強く言い張った。

 

ムカッとしたが些細なことで、朝から喧嘩することもないと思い、気持ちを抑えて、「探して出てきたんだから良かったよ。お湯で溶かそう」と優しく言い、給湯器のお湯をかけて元に戻した。

 

妻は、黙って包丁を受け取り「私は、してないわ」という態度で、みそ汁に入れるネギを刻んだ。互いに居たたまれない雰囲気になった。

 

「新聞取ってくるわ」と言い、私は庭の郵便受けに行った。木蓮の花が綺麗に咲き、2羽の小鳥がさえずっていた。

 

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    本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症介護自宅ケア奮闘記 私の知恵と工夫』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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