2025年には、日本の中小企業の約半分にあたる127万社が「後継者不在」になると予想されています。今回は、従業員による事業承継「従業員承継」において、会社の株式を取得する資金が不足している場合の対応策について解説します。※本連載は、植木康彦氏、髙井章光氏、榑林一典氏、宇野俊英氏、上原久和氏の共著『ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答』(税務研究会出版局)より一部を抜粋・再編集したものです。

「事業承継」の成功のカギは“経営理念”の浸透にあり

Q. 我が社は先代が創業し、創業50年を迎えますが、親族内に後継者がおらず、番頭格の専務が後継指名を受けています。事業承継において、経営理念の承継が重要と言われますが、その理由を教えてください。

 

A. 創業者やカリスマ経営者の時代には、その人自身が生きた経営理念のようなものですから、言葉にしなくてもその想いは社内に浸透できたかもしれません。しかし、時代を重ねるにつれその理念の浸透は薄くなりがちなため、同じ想いを共有し直すことが重要な意味を持ちます。

「経営理念」「経営ビジョン」「経営戦略」の違い

経営理念とは、企業が経営活動を行っていく上での基本的な考え方、あるいは想い、信念、スタンス、方向性を示すものです。類似の用語に経営ビジョンがありますが、経営ビジョンとは、経営理念を具体化した構想、あるいは中長期のゴール目標をいいます。

 

そして、経営戦略とは、中長期のゴールを目指した具体的な活動や計画をいいます。例えば、お菓子で著名な「江崎グリコ株式会社」の経営理念は、「おいしさと健康」ですが、経営理念を実現するために、「創ることを精一杯楽しみ創意に満ちたチャレンジを続けていくこと」を経営ビジョン(スピリッツ)としております。

 

経営理念は、経営のコンパスとも言われます。経営も人生と同じで、山あり谷ありですから、時に大きな経営判断が求められ、判断に迷ったときの規範となるのが、経営理念になります。

 

「経営理念」を共有することで得られる効果は?

創業者は、何らかの信条や目的をもって会社を創業したはずで、経営理念は、企業にとっての存在意義にあたります。なぜ、我が社は存在するのか、社会にとって必要な存在なのか、その答えは経営理念にあるはずで、もしその理念に対して現代の感覚とズレていたり、後継者が共感できない場合には、時代にマッチした見直しが必要です。

 

創業者やカリスマ経営者の時代には、その人自身が生きた経営理念のようなものですから、言葉にしなくてもその想いは社内に浸透できたかもしれません。

 

しかし、二代目や三代目、果ては役員や従業員が後継者となる時代となると、その理念の浸透は薄くなりがちです。このような場合、経営理念をあらためて認識し直し、同じ想いを社員全員が共有することによって、同じゴールを目指すことが可能になると思います。

 

御社の場合はオーナー家でない専務が後継者になるということですので、求心力を経営理念に求めることで、一体感が醸成できる場合があります。事業承継のタイミングは、経営理念を再認識するよい機会ですから、改めて、社員全員で確認してみましょう。

「経営理念」を効果的に浸透させる方法は?

経営理念の浸透には、応接室に掲示したり、朝礼で復唱したりいろいろな方法があります。しかしながら、押し付けの経営理念ではなかなか浸透しないのも現実です。

 

経営理念と実際の業務とを密接に関連付けしたり、人事評価に経営理念関連項目を取り入れたりし、モチベーションをあげる方法がありますが、事業計画をボトムアップで作成することが効果的な場合があります。

 

経営理念や経営ビジョンを達成するための事業計画を従業員みんなで知恵を出して作り上げる方法です。腹に落ちれば、意外とスムーズに浸透するようです。

 

 

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ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答

ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答

植木 康彦、髙井 章光、榑林 一典、宇野 俊英、上原 久和

税務研究会出版局

●本書は、事業承継時に想定される税務、法務、M&Aなどに関して、それぞれの分野の専門家が実務上起こりうる問題点を踏まえてQ&A形式でわかりやすく解説しています。 ●本書の特徴は、以下があげられます。 ・ベーシックな…

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