2025年には、日本の中小企業の約半分にあたる127万社が「後継者不在」になると予想されており、「事業承継」や「M&A」による対策が急がれています。今回は、新社長と大株主の間で起こった「経営権剥奪」の紛争と対応策について見ていきます。※本連載は、植木康彦氏、髙井章光氏、榑林一典氏、宇野俊英氏、上原久和氏の共著『ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答』(税務研究会出版局)より一部を抜粋・再編集したものです。

安定した経営の維持には、「大株主」の支持が不可欠

株式会社は株主の議決権行使によって決める株主総会で、取締役や監査役などの役員を選任したり、重要な事業の譲渡や会社分割、合併を決議します。また、全体の3%の議決権を保有する株主は会社に対して臨時株主総会を開催するよう求めることができ、株主総会において、議案を提出する権限も有しています。

 

すなわち、平時であれば、経営陣が取締役会によって決めた事項を株主総会にかけて決議を得ることになりますが、株主が積極的に動く場合には、臨時株主総会を開催させ、自らが要望する議案を株主総会に上程させて、多数決にて可決してしまうことが可能です。

 

経営者が安定した経営を継続するためには、取締役の地位を常に確保できる状況が必要であり、少なくとも大株主の支持を得ておく必要があります。したがって、少なくとも大株主に対しては、常に経営方針について説明し、関係を保持しておくことを心がけておく必要があります。

株主総会の決議で勝つための「議決権」を確保する方法

設問のように、現経営陣に反対する大株主がいるような場合には、株主総会の決議で勝つために必要な議決権を確保する必要があります。

 

議決権確保の方法としては、他の大株主に対して、現経営陣側で議決権を行使することを依頼し、現経営陣に対して議決権行使を委任する内容の委任状を作成して提出してもらうことが考えられます。

 

その上で、さらに当該株主が懇意としている別の大株主に対しても同様の働きかけをしてもらえるよう説得することになります。

 

現経営陣が資金を確保することができれば、経営に関心がない株主に対して、高額にて現経営陣が株式を購入することを申し入れ、株式を買い占めていく方法をとることができます。

 

なお、反対株主が同様に経営に関心のない株主から株式を購入しようとする場合には、中小企業においては通常、取締役会の承認が必要とされているため、当該株主から株式譲渡について取締役会に承認請求がなされることになります。

 

その際、取締役会においてはこれを承認せず、他の買主候補として現経営陣側の者を指定することができ、当該株主は購入代金の取得にしか関心がなければ、現経営陣側にて株式を取得できる可能性があります。

 

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ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答

ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答

植木 康彦、髙井 章光、榑林 一典、宇野 俊英、上原 久和

税務研究会出版局

●本書は、事業承継時に想定される税務、法務、M&Aなどに関して、それぞれの分野の専門家が実務上起こりうる問題点を踏まえてQ&A形式でわかりやすく解説しています。 ●本書の特徴は、以下があげられます。 ・ベーシックな…

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