こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

子どもが興味を持ったものを破壊してはいけない

このときに大切なのは、「子どもが興味を持ったものを破壊しないようにする」ことです。そのためには、子どもが何かに興味を持ったら、すぐに励ましてあげるのです。

 

台湾の親には、「医者になってほしい」とか「看護師になってほしい」とか「エンジニアになってほしい」といった、ある一定の固定観念があります。しかし、子どもの関心は必ずしも親が望んだ職業と合致するとは限りません。もしかすると服のデザイナーになりたいかもしれないのに、「医者になれ、看護師になれ、エンジニアになれ」というのは意味がないことです。下手をすれば、両方への興味が台無しになるかもしれません。

 

子どもの関心を破壊してしまえば、結局、子どもの成績も良くはならないでしょう。そうなるとやはり、「本人の興味のあることを励まして背中を押してあげる」ことが一番良い方法ではないかと思います。

 

興味や関心が見つからないのに大学に進学しても意味はない

 

台湾では、新しい指導要綱が作成された際に、高校三年生は卒業後に大学に進学せず、そのまま社会に出てもいいけれど、その後に何かを学びたいと思えば、再び大学進学の道に戻ることができるようになりました。生涯学習というプロセスを考えると、いつでも大学に行くことができるようにしたのです。

 

大学は常に存在しているので、高校卒業のタイミングで無理して進学する必要はありません。実際、多くの十八歳の若者たちはそう思っています。ただ難しいのは、親が必ずしもそうした考えを共有していないということです。親の世代は「少なくともあと四年勉強して、まずは学位を取るべきだ」という考えを常に持っているからです。

 

しかし、次の立法院では、十八歳を成年とする法案が可決されるかもしれません。可決後は、親が大学に行かせたいと思っても、子どもが親に「一、二年待ってください」と言ってもいいのではないでしょうか。

 

私自身は中学を中退してネットで自主勉強をしましたが、だからといって、高校や大学に行く意味がないとは考えていません。高校へ行く意義は、「自分がどんな問題を解決したいのか」という関心を探ることでしょう。

 

今の高校制度では、学ぶ科目が選択制になっているので、自分が直面している状況や問題意識、関心の対象をすべて高校で学ぶ科目に落とし込むことができます。それによって、「自分が社会の何に関心を持っているのか」「社会の要求をどう受け止めるのか」「どのようにして共通の価値観を生み出すのか」などを考えながら学ぶことができます。

 

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

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オードリー・タン

プレジデント社

2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID‐19)の封じ込めに、成功した台湾。その中心的な役割を担い、2020年新型コロナウイルス禍においてマスク在庫管理システムを構築、台湾での感染拡大防止に大きな貢献を果たす。…

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