高齢化、人口減少…昨今、マンションを取り囲む状況は極めて厳しいものになっています。大阪経済法科大学経済学部教授の米山秀隆氏の書籍『限界マンション 次に来る空き家問題』(日本経済新聞出版社)より一部を抜粋・編集し、老朽マンションの現状を解説していきます。

古い物件で進む「空室化」「賃貸化」…スラム化の危険

マンションはまた、時間の経過とともに、空室化、賃貸化が進んでいく。総務省「住宅・土地統計調査」(2018年)によれば、マンションの空室率は古い物件ほど高く、1970年以前の完成では、20%超が23.8%に達する。一方、国土交通省「マンション総合調査」によれば、マンションの空室率は全体では2.4%に過ぎないが、1974年以前完成のマンションでは空室戸数が10%超の物件が増え、1969年以前になると空室戸数が15%超の物件が増えていく。

 

いずれの統計でも、築40年を超えると、マンションの空室率が高まっていくことがわかる。今後、築40年超のマンションが増えていくことを指摘したが、これらのマンションは、その時には空室率も高くなっていることになる。

 

国土交通省統計で、2008年度から2013年度の5年間で、空室戸数の割合がどれだけ変化したかを見ると、1970年~1974年、1975年~1979年と完成年次が古い物件では、空室戸数の割合が上昇している。

 

さらに、1970年~1974年完成の物件について、空室戸数割合の分布がどのように変化したかを見ると、2013年度においては空室戸数の割合がより高いほうにシフトしている。今後、時間の経過とともに、区分所有者の高齢化や空室化が進んでいくため、管理機能も落ちていく。

 

次に、マンション賃貸化の状況であるが、マンションは相続しても住まずに貸す、また最初から貸す目的で取得するものも少なくない。区分所有者が住まず賃貸物件の割合が高くなると、これもまた、管理機能を弱める要因となる。

 

総務省統計によれば、賃貸戸数の割合は古い物件ほど高く、1970年以前の完成では、20~50%が19%、50%以上が6%に達する。区分所有者が高齢者して高齢者向け施設などに移る場合や、亡くなった後に相続人が住まず、貸すケースが増えていくことが考えられる。

 

一方、国土交通省統計によれば、1968年以前完成の物件では、賃貸戸数の割合は22.3%になっている。2008年度と2013年度の5年間で、賃貸戸数の割合がどれだけ変化したかを見ると、1970年~1974年完成の物件は賃貸戸数の割合が上昇している。

 

以上から古い物件ほど空室化、賃貸化が進んでいることがわかる。管理組合の機能が著しく低下した場合、マンションがスラム化する危険が生ずる。

 

米山秀隆

大阪経済法科大学経済学部教授

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

限界マンション 次に来る空き家問題

限界マンション 次に来る空き家問題

米山 秀隆

日本経済新聞出版社

進む、建物の老朽化と住民の高齢化。 老朽化マンションの放置・スラム化は不可避なのか? マンションは終の棲家にならないのか? ▼老朽化したマンションの末路は、スラムか廃墟か。居住者の高齢化と建物の老朽化という「2…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧