オーストラリアの三大都市(シドニー・メルボルン・ブリスベン)の不動産価格は、2009年ごろまでは横並びでした。しかし、ある国の影響で価格は上昇し、なかでもシドニーの不動産価格は簡単には手が届かないレベルまで達しました。その背景を、32年間にわたってオーストラリアで不動産ビジネスを手掛けている株式会社ワイドエステートの砂川盛作代表が解説します。

2009年、不動産規制撤廃で「チャイナマネー」が流入

通常、豪州では外国人は中古の居住物件を購入できません。しかし、学生(外国留学生)が住むことを主たる目的とするのであれば、中古物件の購入でも特別に許可がおります。

 

ここからが驚くべき事実です。

 

外国人の留学生が豪州の不動産を取得できるのは、2008年までは「居住目的」に加えて「購入の上限額を30万ドル(約2,550万円)とし、「中古物件はこの額未満であることが条件付き」でした。

 

しかし、2009年に上限額の規制が撤廃になり、学生(外国留学生)が住むことを主たる目的とするのであれば、高額な物件でも購入できるように緩和されました。

 

その結果、どうなったでしょうか?

 

豪州で留学する子供の名義で不動産を購入させるべく、特にチャイナマネーが大量に入ってきました。通常は居住用不動産の中古物件は買えませんが、子供の名義(あるいは名義貸し)であれば購入できるようになったので、チャイナマネーが殺到したことは容易に想像できます。

 

豪州に移住する就労者・留学生の約7割はシドニーとメルボルンに住むという統計もあり、多くの人が海外から押し寄せ、規制緩和のもと、中古の物件を購入したことが推測されます。その結果が、【図表2】にも表れています。

 

出所:コアロジック社
[図表2]オーストラリア主要都市の中古物件の価格推移(2010年を100とした場合) 出所:コアロジック社

 

もちろん、これだけが不動産価格上昇の理由ではありません。この規制の抜け道を上手く利用して優良な中古物件を購入した外国人も多く、その結果、当時の不動産の実勢価格を底上げしたという事実は見逃せません。

 

不動産購入の規制が敷かれたのは「日本人」のせい?

もう一つ面白い事実があります。オーストラリアでは、現在でも外国人による中古の居住用不動産が購入できないわけですが、いつごろその規制が敷かれたと思いますか?

 

答えは、1987年からです。そして、実はこの時は日本が絡んでいます。当時日本はバブル期で、ジャパンマネーがオーストラリアに大量に流れ込み、現地の不動産を買い漁る状況でした。

 

当時のオーストラリアの経済規模は小さく、国民所得も日本と比較すると低かったため、外資によって国内の居住用不動産の価格が急上昇することは国民の利益を損ねます。その抑制策として、外国人による中古の居住用不動産の取引に規制をかけたのです。

 

筆者が日本のセミナーなどで「オーストラリアでは外国人による中古居住物件の購入は規制されています」と説明をすると、「外国人の締め出し政策だね」とお客様から言われることがたまにあります。しかし、その政策のきっかけを作ったのは、紛れもなく私たち日本人だったのです。

 

今でこそオーストラリアは経済の成長率、人口増加率、国内総生産に対する一人当たりの所得は日本を優に上回っています。しかし、当時オーストラリアが小国であるがゆえにとった施策が今でもいきているというのは、面白い事実だと思います。

 

 

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