相続財産に「不動産」が含まれる場合、親族間のトラブルを招きやすくなります。そして、問題を曖昧のまま放置すると、孫の代まで絡んで収拾がつかなくなるケースもあります。今回は、土地と建物の名義が異なる「借地」に家を建てて住んでいて、地主から借地の返還を求められた場合、更地にして返すべきかどうかを解説します。※本連載は、松原昌洙氏の著書『不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続』(毎日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

相続のときに地主から「借地の返還」を求められたら?

相続のときには、地主から土地の返還を求められたり、建物の解体を求められたりすることがよくあります。借地人は知識がないので、そのまま無償で返還に応じたり、建物を自分の費用で解体したりします。

 

しかし、借地権はもともと土地の返還は拒否できる制度です。無償で土地を返す必要もありませんし、返さなければ解体費用を負担する必要もありません。

 

何よりも何千万という借地権の売却価値を無償で手放すことになってしまいます。借地権の価値は底地に対してはるかに高くなります。通常物件の価格が5000万円であれば借地権付き建物の価格は3500万円くらいです。このとき底地はせいぜい1000万円か1500万円です。

 

つまり、借地権は3500万円で売却できるのです。いわれるままに土地を無償返還すれば、これをみすみす地主にやってしまうことになります。

 

こうしたことを専門家を通して交渉すれば不要な費用をかけなくてすむばかりか、借地権の売却により相応の収益を得ることができるのです。交渉によって地主は落としどころを探りながら合意していきます。

「等価交換」なら、借地人と地主で公平な解決が可能

状況によっては、等価交換が提案できる場合もあります。例えば、50坪の土地の半分側25坪の中に家が建っている場合、家のない25坪は地主に返還し、建物側の25坪は借地人が無償で譲り受けるのです。これでそれぞれが単独の完全な所有権を得ることになります。

 

公平性からは土地自体を半分にするのではなく、双方の合意で比率を決めることになります。例えば、借地権が底地より価値が高いことによる譲渡税の問題があります。借地権と底地の割合が6対4だとすれば、土地を等分したのでは借地権者が譲渡税を多く払うことになり、地主が有利になってしまいます。

 

この場合、借地権割合を基準にすれば借地人6対地主4で土地を分割すれば譲渡税が公平になります。

 

最終手段の「借地非訟」を使うと、地主の承諾は不要

借地権を第三者に売却するには地主の承諾が必要ですが、地主の承諾が得られない場合、借地非訟という申し立てを裁判所に行うことで、地主の承諾に代わる許可を得ることができます。借地非訟は地代の滞納があるとか反社会的勢力に売るといったことがない限り、必ず認められます。

 

ただし、借地非訟は買う側は申し立てられず、売り主しか申し立てられません。もうひとつには、買う契約が成立している(所有権は移転していない)ことが条件です。つまり、買い手を見つけて売買契約ができていなければなりません。

 

松原 昌洙

株式会社中央プロパティー 代表取締役社長

 

 

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