相続財産に「不動産」が含まれる場合、親族間のトラブルを招きやすくなります。今回は、遺された実家が相続トラブルの焦点となった2つの事例と、その解決法について見ていきます。※本連載は、松原昌洙氏の著書『不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続』(毎日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

共有名義のトラブルを避けるには「事前の対策」が必要

できれば親が生きているうちに話をする

相続トラブルを避けるためには、可能なら親子で話し合って決められればそれに越したことはありません。特に共有名義の問題はトラブルのもととなるので、親の意思と子の要望を出し合って方向性を決めておくのが理想的です。

 

例えば、長男が親と同居しているなら実家は長男が受け継ぎ、他の兄弟姉妹には実情に応じた配慮を行うといったことを決めておきます。不動産に関しては、どんな形にせよ最終的には共有名義を解消するような取り決めをしておくことが重要です。子供同士では主張が対立してうまく話し合えなくても、親の意向ということでまとまるという場合もあります。

 

遺言書は必ず残しておく

たとえ親子で合意しても、遺言書は必ず残しておくべきです。口約束では、親が亡くなった後、親の意向を証明する手段がなくなります。遺言書は、法律的な強制力を持つという意味で最も有効な相続トラブル回避の具体的手段です。

 

また、たとえ法定相続分どおりでも遺言書を書くべきです。寄与分(親の看護をしたなど他の相続人より貢献している分)や特別受益(マイホーム資金を援助してもらったなど他の相続人より多い利益を受けている分)の主張でもめることを防ぐためです。

 

自宅以外にアパートなどの収益不動産がある場合には、賃料を兄弟姉妹が均等に受けられるようにあえて共有名義を遺言書で指定しておくと安心です。

 

認知症対策には遺言書代わりに家族信託の活用も選択肢

高齢化が進んできた我が国では、亡くなる前に認知症になる人も増えてきています。親が認知症になって判断能力を失ってしまうと相続分の分け方の確認ができませんし、遺言書ももちろん書けません。

 

さらに、不動産の取引もできなくなりますから、生前に準備しようと思っても売ることも貸すこともできなくなってしまいます。

 

認知症への事前対策のひとつとしては、家族信託という制度があります。親の財産の管理を信頼できる家族に託す制度で、委託者(親)と受託者(子)が信託契約を結ぶことによって利用できます。親が判断能力のあるうちに認知症になったときの財産管理について長男など信頼のおける家族を指名しておきます。

 

ただし、受託者は生前の認知症期間の財産管理を行うだけですから、必ずしも相続時に相続財産をそのままもらえるわけではありません。死後の相続で財産を誰に相続させるかは決めておくこともできますから、共有名義のトラブルを防ぐ遺言書代わりにも使うことができます。

 

相続時には共有名義の扱いを文書で決めておく

実際には、親の生前に遺産の分け方を話すのはなかなかできないのが実情です。遺言書があっても内容が偏っていて、生前に親から確認を受けていなければ、遺留分を主張するトラブルのリスクがあります。

 

そこで、特に共有名義についてはどの時点でどう共有状態を解消するのかを相続時点で取り決めて文書化しておくことが重要です。共有名義解消をはっきりと決めておくことが共有名義トラブルを事前に防ぐポイントとなります。

 

松原 昌洙

株式会社中央プロパティー 代表取締役社長

 

 

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