「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

30万円未満の少額減価償却資産は一括経費計上可能

ここまで見てきたように、10万円以上の固定資産を購入すると、じっさいは手元からお金がなくなっているのに、すぐに全額を必要経費にすることができないという事態になります。つまり、固定資産を購入した年分の所得税の税負担が重くなってしまうので、とくに開業したばかりで資金繰りが厳しい人にとっては大変かもしれません。

 

では、どうすればいいのでしょう。ひとつは、物品を購入するときには10万円ルールを頭に置いて、できるだけ10万円未満に収めるという方法が考えられます。

 

とはいえ、仕事の内容によってはそうはいかないこともあるはずです。たとえば、専門的な器具など10万円で買えないものもあるでしょう。そのような場合、使える裏技があります。それが青色申告の特典です。

 

青色申告にはさまざまな特典があったことを思い出してください。この特典のなかに、「少額減価償却資産の特例」というものがあります。

 

これは、「1個または1組当たり30万円未満の少額減価償却資産については、購入・使用を開始した年分に一括で経費計上することができる」というものです。

 

年間の累計額が300万円までという条件はありますが、1個または1組で30万円未満であれば、一括で必要経費にできるので、心強いのではないでしょうか。

 

白色申告の場合は、この特典を使うことができないため、10万円ルールにしたがって減価償却をしなくてはなりません。

 

減価償却を数年に分けておこなうときにやっかいなのが、減価償却資産の管理です。たとえば、パソコンの耐用年数は4年と説明しましたが、これは4年間にわたって毎年減価償却の計算をして、確定申告書に反映させなくてはならないということです。しかも、耐用年数がくる前に買い替えた場合の会計処理など、面倒くさいことがいろいろとついてまわります。

 

その点、一括で必要経費にできれば、支払った年分の確定申告に計上するだけでスッキリ終わりです。したがって、できれば青色申告で一括償却にして、このような手間を減らすことをおすすめします。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年2月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

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