新型コロナウイルス感染の収束が見えないなか、先進国を中心に株式市場は活況を満ちています。実体経済との乖離も指摘され、警報を鳴らす専門家も多いなか、注目されているのがフィリピン株式です。その理由を、現地で日々フィリピン経済を調査している一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクター、家村均氏が解説します。

巨大財閥が牛耳るフィリピン…投資家メリットは大きい

 

次にフィリピンの株式市場についてお話しします。

 

フィリピンの株式市場の歴史は東南アジアで最も古く、1927年にマニラ証券取引所(MSE:Manila Stock Exchange)が設立され、当時フィリピンはアメリカ合衆国の植民地のため、米国証券取引制度を模倣としました。その後1963年にはスペイン系財閥と地元証券会社数社が同国2番目のマカティ証券取引所(MkSE:Makati Stock Exchange)を設立し、1993年に両取引所は合併、フィリピン証券取引所(Philippine Stock Exchange(PSE))を設立しました。

 

上場銘柄数は、約270銘柄です。これは東京証券取引所の全銘柄数約3,000銘柄と比べて、約10分の1であり、非常に銘柄数が少ないことがフィリピン証券取引所の特徴のひとつです。これは裏を返せば、銘柄選びが比較的簡単といえます。さらに、この少ない銘柄のうち、財閥系企業が多くを占めていることも特徴。時価総額上位の銘柄は財閥の持株会社が多くを占め、他には不動産、金融、資源・エネルギー、インフラなどの基幹産業が目立ちます。

 

また、この約270の銘柄のうち、代表的な企業30社で構成されるのが、フィリピン総合指数(PSEi: PSE Composite Index)です。フィリピン総合指数は時価総額加重平均指数で、フィリピン証券取引所に上場している商工業、金融、不動産、鉱業、石油の各セクターの銘柄で構成されています。

 

ということで、フィリピン経済を語るうえで欠かせないのが“財閥”の存在です。これは戦前の三菱財閥、三井財閥、住友財閥のような存在です。戦後GHQが日本の財閥を解体したのは、日本の社会・経済において財閥があまりにも強大な力を持ち過ぎていたからです。そして今のフィリピン経済はこの財閥グループが支配しているといっても過言ではありません。総資産比でも時価総額比でもフィリピン株市場全体の30%前後を占めています。

 

ただ、これはHolding Firmsというセクターに分類された財閥銘柄だけ足し上げたもので、実際には、このHolding Firmsの傘下に複雑に資本が絡み合っている多数のグループ会社が存在するのが財閥なので、それらを含めれば全体の50%近くを財閥関連企業が占めているといわれています。

 

このHolding Firmsというセクターの中でも特に巨大な企業10社を10大財閥といっています。フィリピンに上場会社数が少ないひとつの大きな要因は、この財閥パワーが強大で、主要産業を抑えているために新興企業の出番が少ないという側面があります。多くの有力企業が財閥傘下で未上場の状態にありますし、上場を目指すスタートアップ企業が財閥企業に買収されて、エグジットするという話もよくあります。

 

財閥企業は、電気、ガス、水道、道路などの社会公共インフラ事業から都市開発、銀行など国の基幹産業で主導権を握っていて、まさにフィリピン経済そのものといってもいい存在です。逆に投資対象と見た時には、非常に有力な投資先となるといえ、フィリピン経済そのものに投資する様なもので長期投資の本流といえます。

 

そして、これら有力10大財閥の銘柄を安く購入できるというのが、フィリピン株の大きな魅力の一つです。仮に10大財閥銘柄を全部購入しても10万円前後。これはフィリピン株の売買最低単位が低いからです。

 

一般的に、株式市場では、ある株数をまとめて売買しなければなりません。日本の株式市場では、現在は基本的に100株単位で売買されます。たとえば、トヨタ自動車であれば70万円程度、任天堂やユニクロ(ファーストリテーリング)などの主要人気銘柄となると一銘柄で数百万円から1000万円くらいの資金が必要になり、なかなか複数銘柄のポートフォリオを作るのは難しいわけですが、フィリピン株の場合には、10大財閥銘柄を全部購入しても10万円前後、インデックスに採用されている30銘柄を全部購入しても、30万円程度と非常に買いやすいというのが大きな魅力です。

 

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