相続財産に「不動産」が含まれる場合、親族間のトラブルを招きやすくなります。そして、問題を曖昧のまま放置すると、孫の代まで絡んで収拾がつかなくなるケースもあります。今回は、親亡き後の「共有名義の実家」を巡って起こったきょうだい間のトラブル事例と解決策を3つ紹介します。※本連載は、松原昌洙氏の著書『不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続』(毎日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「持分放棄」…自分の持分を放棄する

自分の受益分の確保にこだわらないときに取る解決方法です。

 

〔事例〕
父親が死亡して、実家を長男・長女・次男で相続しました。しかし、実家の土地は複雑な形状をしており、どの部分を3人でどう分けるかで話し合いがつきません。長引く協議に嫌気のさした長女は対価はいらないから相続放棄したいと考えるようになりましたが、3ヵ月はとうに過ぎているので相続放棄はできません。

 

問題点のポイント

自分の共有持分を放棄する方法には、相続放棄のほかに持分放棄があります。持分放棄であれば相続開始から3ヵ月を過ぎても行うことができます。持分放棄自体は単独でできますが、持分放棄の登記(持分移転登記)は他の共有者の同意を得て共同申請しなければなりません。贈与税の対象になることにも注意が必要です。

 

解決策の提案と解決のプロセス

相続放棄は期限(相続開始から3ヵ月)がありますが、持分放棄には期限はありません。持分放棄はいつでも単独ででき、他の共有者の同意は必要ありません。放棄した持分は他の共有者に持分割合に応じて振り分けられます。

 

筆者は、相続放棄は3ヵ月の期限が過ぎていること、持分放棄は可能だが、自分の持分だけ売却することも可能だということを説明しました。長女は持分売却だと第三者が共有者となることで兄弟たちとトラブルにしたくないし、自分はお金も入らなくていいということで持分放棄の選択を希望しました。

 

そこで、筆者から長男と次男に、持分放棄の説明と「贈与税はかかるが、今後資産の値上がりが期待できるため、将来売るときには売却時の税金が安くなる可能性が高い」といった話をしました。

 

その結果、長女は長男と次男の同意を得て持分放棄の登記をしてもらい、共有状態を離脱することができました。

 

松原 昌洙

株式会社中央プロパティー 代表取締役社長

 

 

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不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続

不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続

松原 昌洙

毎日新聞出版

本書では、「富裕層ではない一般の人」が親の死亡で実家の不動産を相続したときに起こるトラブルに焦点を当てて、その背景や原因についてわかりやすく説明し、解決策や予防策を紹介します。

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